ユーザー車検に興味があるけれど、どのようなものか、どんなことを行うのかわからないという方もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、通常の車検との違いやユーザー車検のメリット・デメリット、さらに検査項目や不合格になりやすいポイントまで丁寧に解説します。
ユーザー車検が自分に合っているかどうか判断するうえで参考にしてみてください。
目次
ユーザー車検とは
ユーザー車検とは、自動車整備工場やカーディーラーに車を持っていかずに、ユーザー自身で点検・整備を行う車検方法です。
通常は工場や店舗が民間の検査場として、点検・整備〜検査までを担ってくれますが、ユーザー車検の場合は、自身で点検・整備を行なった後、最寄りの運輸局で検査を行い合格をもらうことで車検証が交付されます。
業者に依頼することなく車検を行うので費用が抑えられる反面、ユーザー自身で検査に通せるよう点検・整備を行うのはくわしい知識と経験が必要です。
近年は、WEB上や本などでもユーザー車検について情報を得ることができるようになり、必ずしも自動車整備工場やカーディーラーで点検・整備を代行する必要はなくなりました。
それでも、専門的知識の必要性そして時間の拘束もあるので、ユーザー車検はかなり難しい車検方法です。
ユーザー車検のメリット
ユーザー自身で点検・整備を行い、そのうえで運輸局に持ち込む必要のあるユーザー車検。
それらを行うことにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは代表的なメリットである費用を抑えられることに加え、2つのメリットを紹介します。
費用を抑えられる
自動車整備工場や、カーディーラーに車検を依頼しない分、車検全体にかかる費用を抑えることができます。
なぜなら、通常の車検では保険料や税金といった法定費用に加えて、業者に対して整備費用を払う必要があるからです。
ユーザー車検ではこの整備費用がかからないので、全体で数万円程度安く車検を行うことができます。
自分で車の状態を把握できる
ユーザー自身であらゆる項目の点検・整備を行うため、車の状態を隅々まで把握することができます。
一回自分で点検を行うことで、普段の使用でも異常にいち早く気がつくことができたり、冷静に対処することができるようになるのです。
しかし、車検の項目は多岐にわたるため、運輸局で合格をもらうためには隅々まで根気強く点検を行う必要があります。
車の税金や保険料について知識が増える
車検の際に必要となる税金や保険の書類を自分で用意する必要があるので、その分知識が身に付きます。
車検では経過年数と排気量で決まる自動車税、そして車の重量に対して金額が変わる自動車重量税が必要となります。また保険は民間の保険ではなく、自賠責保険(共済)の証明書が必要です。
税金や保険の知識が身に付くことで、車にかかる費用や補償などを正しく理解することができます。
ユーザー車検のデメリット
費用を抑えられるだけでなく車や税金・保険などの知識が身に付く一方、業者に依頼しない分の負担や不便さがあるユーザー車検。具体的にはどのようなデメリットが考えられるのでしょうか。
ここでは4つのデメリットを紹介します。
受ける時間が決められている
ユーザー車検では自身で点検・整備を行った後、最寄りの運輸支局あるいは軽自動車協会で正式な検査を行う必要があります。しかし、運輸局・軽自動車協会はどちらも営業時間が限られており、平日の日中にしか対応していません(営業時間:午前8:45~11:45、午後1:00~4:00、土日・祝日および年末年始(12月29日~1月3日)を除く)。
時間と手間がかかる
ユーザー車検では通常の車検に比べて時間と手間がかかります。なぜなら、業者にすべて任せている内容を自分自身ですべて行う必要があるからです。
具体的には、複数ある検査項目の点検と整備、そして運輸局や軽自動車協会での検査を行うための書類の準備、当日の検査などをすべて自分自身で対応する必要があります。
特に点検・整備には専門知識が必要なので、点検の経験がない人にとっては難しく、より多くの時間がかかるでしょう。
24ヶ月点検を別途受ける必要がある
24ヶ月点検も車の所有者に法律で義務付けられています。24ヶ月点検とは、車が安全に走行できるよう、エンジンやブレーキなどの消耗具合を確かめる定期点検です。
2年に1回と車検と同サイクルなので、業者の場合、車検時に車検の料金内で24ヶ月点検も行うことがほとんどです。
時には部品を解体しながら点検・整備をしていく専門的な点検なので、ユーザー車検をしても別途24ヶ月点検は業者に依頼する場合がほとんどです。
車検とまとめて依頼するのが、結果的にはお得と考えることもできます。
車検が通らないというリスクがある
車検時に検査項目が保安基準に満たない場合、不合格になる可能性があります。
当日に基準に満たない箇所を整備してもう一度受けることもできますが、1日に受けられる回数は最大3回です。その日のうちに整備できない箇所もあるかもしれません。
なお、初回の検査日から2週間以上経ってから再検査を受ける場合は、1,800円(軽自動車:1,700円)の追加費用がかかってしまいます。
ユーザー車検の検査項目一覧
陸運局や軽自動車協会に車を持ち込み、検査コースに入場後、検査官の立ち会いのもと自分自身でユーザー車検を行なっていきます。
車が公道を走る上での保安基準を満たしているかを確かめるため、以下の8つの項目を順番に検査していきます。
同一性の確認
検査コースに入場するとまず、同一性の確認をします。こちらは車検証や申請書類の内容と、車の情報が同じであるかを確認する検査です。
検査官に資料を渡し、ボンネットを開けてエンジンなどが不正に改造されていないかを確かめていきます。
具体的な確認項目は以下のとおりです。
- 車体番号
- 種別
- 用途
- 番号標(ナンバープレート)
- 原動機型式
- 車体の形状
検査官が目視でこれらの項目を検査していきます。
外廻り(外観ボディ)検査
こちらも、検査コースの入口で検査官が車の外観を目視で検査します。
主な検査項目は以下のとおりです。
- 車枠、車体
- 保安装置
- 走行装置
- 乗車装置
- 電気装置
- 操縦装置
- 灯火器類
- 原動機
具体的には、検査官が外観のキズやへこみを目視で確認したり、ホイールナットの緩み具合を工具などで叩いて確認します。
また、ライト類や、ワイパー、クラクションを実際に動かし、動作状況を確認します。クラクションマークなどの有効期限の確認もあわせて行います。
サイドスリップ検査
入口での目視確認が終わると検査コースを実際に運転操作をしながら進み、各項目を検査していきます。
サイドスリップ検査では、車がまっすぐに走行できるか(かじ取車輪の横滑り量)を確認していきます。
まれにタイヤ周りが損傷していたり不備があると直進安定性が崩れ、横滑りが起きてしまう場合があるからです。
検査コース上にタイヤをあわせてゆっくり・まっすぐ車を走らせます。ここでは検査官ではなく、機械が合格かどうかを判断します。前方の電光掲示板に「○」と表示されたら合格です。
ブレーキ検査
ブレーキの制動力を検査していきます。検査コース上にあるローラーの上でブレーキ操作を行い、ブレーキ作動に問題がないか(制動力)を確認していきます。
ブレーキの不具合があると重大な事故につながるので「フットブレーキ」「サイドブレーキ」両方のブレーキに制動力があるかを厳しく検査されます。
ローラー上にタイヤを乗せると判定がスタート。電子版の指示通りに、フットブレーキを強く踏み制動力を調べます。「○」と表示されたら合格です。
スピードメーター検査
速度計(スピードメーター)と、実際の速度の誤差を調べる検査です。電光掲示板の指示に従って40km/hまで速度を上げ、スピードメーターが「40km」を指したらパッシングをして知らせます。
電光掲示板に「○」と表示されたら合格です。誤差の範囲は10km/h程度とあまり厳密ではないので、緊張しすぎる必要はありません。
ただし、事故を防ぐためにもハンドルをまっすぐ握ることを意識しましょう。
ヘッドライト検査
ヘッドライトの「照射光度」と「向き」を確認する検査です。以前は「ハイライトビーム」の光度・光軸を検査していましたが、2015年(平成27年)9月1日以降「ロービーム」を検査対象としています(ロービームの使用頻度の傾向から)。
電光掲示板の指示に従い、ヘッドライトテスターに向かってロービームでヘッドライトの点灯を行います。照射光度・向きが基準値内の場合、「○」と表示されます。
排気ガス検査
マフラーから排出される「一酸化炭素」「炭化水素」の量を測定し、異常がないかを検査します。これら2つのガスは有毒なため、一定以上の濃度で排出されていると危険です。
具体的な検査方法はシンプルで、車のエンジンをかけたまま外に出て排気ガステスターをマフラーに差し込み、待機します。数秒後には測定が完了し、濃度が基準値以内だと「○」と表示されます。
異常がある場合は、本格的な整備をする必要があります。
下廻り検査
車両下部に不備がないかを確認します。主な検査項目は以下のとおりです。
- かじ取装置
- 制動装置
- 原動機
- 動力伝達装置
- 車枠、車体
- 排出ガス発散防止装置
- 燃料装置
- 電気装置
- 走行装置
具体的には、電光掲示板の指示に従って、エンジン、ギア、ブレーキなどの操作を行います。
不備がなかった場合は「○」と表示され、不備があれば検査官から呼び出され指示を受けます。
ユーザー車検で不合格になりやすいポイント
ユーザー車検では、検査項目の保安基準だけでなくさまざまな理由で不合格になる場合があります。
どのような理由で不合格になりやすいかを理解して、スムーズにユーザー車検を通過できるよう準備していきましょう。
書類の不備
ユーザー車検では用意しなくてはならない書類がたくさんあるため、記入漏れや書類の不足が起きる可能性があります。
書類は事前に準備するものと当日運輸局で入手するものがあるので、最新情報を国土交通省のWEBサイトで確認しておくと安心です。
また計画を立てて書類を準備しておかないと、直前になって税金の未納や保険の期限切れが発覚したりなど、書類の不足が起きてしまうこともあるため注意しましょう。
違反金の未払い
税金などの未納に加え、違反金の未払いも不合格の理由になります。前回の車検からスピード違反や駐車違反などの交通違反をした記憶がある場合は、きちんと違反金を払っているか確認をしておきましょう。
不安な場合は、一般社団法人日本自動車整備振興会連合会(略称:日整連)が運用する「放置違反金滞納車情報照会システム」で、車検拒否(違反金未納)の状態になっているかをWEB上で確認することができます。
整備不良
検査項目が整備不良によって基準に満たない場合も当然ながら不合格となります。
たとえば、ブレーキランプの電球切れやウィンドウォッシャー液切れなど、その日のうちに整備が可能な消耗品の不足が考えられます。
一方で、排出ガスの異常など、修理や整備に時間を要する不備が見つかる可能性もあります。また、エクステリアやインテリアの改造をした、改造車なども不合格の対象となります。
各パーツの不合格対象の状態は、以下のとおりです。
窓・フロントガラス
車検標章以外のステッカーやフィルムが貼ってある。
タイヤ・ホイール
タイヤが車両からはみ出している、サイズオーバーのホイールの装着がある。
ヘッドライト
白色以外のライトがついている。(2005年(平成17年)12月31日以前に登録された車の場合、黄色でも可)
エアロパーツ
取り付け方が違う、車両から大きくはみ出している。
操作ミス
ユーザー車検では、検査ラインの中で自分で車を操作し、検査を進めていきます。緊張もあり、慣れていないと操作が上手くできない場合もあります。
その場合、車に不備はなくても不合格となってしまいます。初めてのユーザー車検にありがちな操作ミスは、以下の2つです。
サイドスリップ検査
1mまっすぐ走行しなければならないのに、ハンドルを切ってしまう。
ブレーキ検査
ブレーキの踏みが甘い。(踏みが甘いと確実に作動しているか判断ができないため)
検査の意図をしっかりと意識して、確実に操作できるよう心の準備をしておくと良いでしょう。万が一、操作のミスで不合格となってしまったら、検査官にどのような不備があったか確認をして再検査に挑みましょう。
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車検のタイミングは乗り換えのタイミングともいわれていますので、車の査定価格をぜひ一度確認してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、ユーザー車検についてのメリット・デメリットや、実際の検査項目までくわしく解説しました。
ユーザー車検は、通常の車検と比べて費用が抑えられたり、車や税金・保険についての知識が身に付くというメリットがある一方、時間と手間がかかるほか別途検査する必要性や車検に通らないリスクも発生します。
ぜひ、ご自身のライフスタイルや事情を考慮したうえで、最適な車検方法を選んでください。
また、ユーザー車検を受ける場合は各検査項目を事前にしっかりと把握し、不合格になりやすいポイントの対策をしたうえで挑むと、スムーズな合格へとつながるでしょう。
※2021年11月現在の情報をもとに掲載しています。