車を保有している場合、新車では購入してから3年目、それ以降は2年ごとに必ず車検を受けなければなりません。しかし、費用も決して安くはなく、時間も手間もかかるので、煩わしく感じているという方も多いのではないでしょうか。特に、毎日の通勤などで車を使う方は「できるだけ短時間で済ませたい」と考えているはずです。
そこでこの記事では、車検にはどれくらい時間がかかるのかという疑問を中心に、車検の作業内容や時短の工夫について解説します。
車検はどれくらい時間がかかるのか
車検に要する時間は、業者に依頼してから1〜2日という場合が多く、依頼先によってばらつきがあります。車検の依頼先は、ディーラー、中古車販売店、車検専門店、ガソリンスタンド、自動車整備工場、あるいはユーザー自身で車検を行うユーザー車検が主な選択肢となります。急ぐ場合には、短時間で完了できる業者を選ぶことが必要です。
ディーラーの場合
ディーラーに車検を依頼する場合、選択肢の中で最も時間がかかることが多く、2〜3日は見ておいた方が良いでしょう。時間がかかるのは、メーカー純正部品を使った高品質な整備をすることが理由です。
ほとんどの場合、車検を通すための最低限の整備だけではなく、車検後の安全な走行のための「予備整備」を行うため検査項目が多くなるため、時間が必要となっています。
また、純正部品の在庫がない場合には、取り寄せるための時間も考慮しなければなりません。
中古車販売店の場合
中古車販売店に併設している工場には、「指定整備工場」と「認証整備工場」があります。
「指定整備工場」は、法定点検や自動車検査など、車検についての全サービスを行うことができるため、多くの場合1日で完了します。
一方で、「認証整備工場」の場合、法定点検は工場内でできますが、自動車検査は国の車検場や指定工場で行う必要があるため、2日以上かかると考えた方が良いでしょう。
車検専門店の場合
車検専門店は車検整備に特化した業者で、部品の交換や複雑な整備・修理などは期待できませんが、明瞭な低価格設定で、均質なサービスと短時間の作業を可能にしています。
事前の立ち会い診断を実施している店が多く、安心してサービスを受けられるほか、ほとんどの場合、当日に作業が終了します。また、1時間程度で作業が終了する「スピード車検」のメニューを備えている店舗も多く見られます。
ただし、普段のメンテナンスが不十分であれば、部品の取り寄せや追加の整備など、予定していない費用や時間が加算されるため注意が必要です。
ガソリンスタンドの場合
ガソリンスタンドの車検は、給油のついでに見積もりや予約を依頼することができ、費用も抑えられていることが多いため、利便性が高く、手軽に利用できます。しかし、ガソリンスタンドは給油や洗車が本業であるため、車検の優先度は低くなり、混雑する傾向があります。
スムーズに作業が進めば1日で済みますが、混雑している場合は2〜3日かかることも想定しておくべきです。
自動車整備工場の場合
自動車整備工場とは、少人数で運営する町工場や個人経営の工場を指します。こちらも「指定整備工場」と「認証整備工場」に分類され、「指定整備工場」では1日で全ての作業を終えることも可能ですが、「認証整備工場」の場合は2〜3日かかると考えておいた方が良いでしょう。
小規模な会社が多いため融通が利きやすく、特別な事情があれば優先的に対応してもらえる可能性があります。
ユーザー車検の場合
ユーザー車検は、業者を利用せずにユーザー自ら車検を行うものです。車両に問題がなければ検査そのものは1時間程度で済むのですが、自身での点検・整備が必要で、検査場まで出向く時間も確保しなければなりません。
また、合格の確率を上げるためには、当日民間の予備検査場で事前に検査・調整を行うことも必要です。不合格の場合は、再検査を受けなければならないため、必ずしも時短に有利とは言えませんが、費用は抑えることができます。
車検の作業と所要時間
車検とは、「国が定めた保安基準をその車が満たしているか」をチェックするためのもので、安全性能や環境性能に問題がないか、保安基準に即した検査内容となります。以下では、車検に必要な作業内容とどの程度の時間がかかるのかを解説していきます。
24ヶ月点検
24ヶ月点検は車検と同時に行う定期点検で、「自動車点検基準」という法律で義務付けられています。主な検査項目は以下の通りです。
・室内点検:ブレーキ・ハンドルの操作具合など
・エンジンルーム点検:燃料漏れ・エンジンオイル漏れ・ファンベルトなど
・下まわり点検:ステアリング・ディファレンシャル・マフラーなど
・外まわり・足まわり:タイヤ・サスペンション・ドライブシャフトなど
上記は、検査項目の一部で、合計すると56項目に及びます。検査に必要な時間は、ディーラーで2〜3日、整備工場で1〜2日、カー用品店などでは3〜4時間が目安です。
整備作業
車の状態が保安基準に満たない場合や、安全な走行のためには整備が必要と判断される場合には、整備作業が行われます。主な実施項目は以下の通りです。
・オイル類のチェック及び交換:エンジンオイル、ブレーキオイルなど
・灯火類のチェック及び交換:ヘッドライト、ブレーキランプなど
・ブレーキパッドやベルト類のチェック及び交換:ブレーキパッド、ファンベルトなど
必要な作業量によってかかる時間は左右されますが、およそ2〜5時間が目安です。
車検の検査
車検の検査では「公道を走る上での安全性能や環境性能に問題がないか」をチェックするための検査が行われます。整備した内容や部品、安全性能などを陸運局で確認する検査です。その内容は、以下の通りです。
・車検証との同一性確認
・外回り検査
・サイドスリップ検査
・ブレーキ検査
・スピードメーター検査
・ヘッドライト検査
・排出ガス検査
・下回り検査
検査自体は1時間ほどで終了しますが、もし通過できなかった場合には、問題のある箇所を改善して、通過できるまで何度も繰り返して再検査を受けなければなりません。
書類手続き
運輸支局内で作成する書類は以下の3点です。
・継続申請書:車検証をコンピュータで発行するために必要な書類
・自動車検査票:車検の検査項目ごとの合否を記録するための用紙
・重量税納付書:自動車重量税を納付するための書類
書類の作成や、法定費用の支払いを含めて、10分程度の時間を要します。
車両の状態で時間は変動する
車両の状態が良ければ、整備作業の時間を節約できるため、車検全体にかかる時間は短くなります。逆に、車両の状態が悪い場合には、整備作業の項目が増えるため、それだけ多くの時間が必要です。
また、パーツを取り寄せるための時間が発生する可能性もあります。さらに、車検に合格できなかった場合には再検査が必要となるため、大幅に時間がかかってしまいます。
車検に時間がかかる理由
車検は、早ければ当日、あるいは数時間で仕上がるケースもあれば、数日かかってしまう場合もあります。ここでは、どのような理由で車検に時間がかかるのかを解説します。
整備項目が多い
点検・整備の項目が増えればそれだけ多くの時間が必要で、ディーラーは特に整備項目が多いことが特徴です。同じ車検でも、最低限の点検のみを行う業者と、念入りに点検して車を最良の状態に整備する業者では、点検・整備の項目の数に大きな差があります。
また、普段の点検・整備を怠っている場合には、問題点が多数見つかり、整備項目が増えるため、その分時間がかかることも考えておかなければなりません。
パーツの取り寄せに時間がかかる
比較的新しい国産車であれば、パーツの入手はさほど難しくありませんが、それでも2〜3日必要な場合があります。自動車整備工場などではメーカー適合品で代替できますが、ディーラーは純正品を使うため、在庫がない場合には入荷を待たなければなりません。
同じ国産車でも、人気の旧車や輸入車などでは、パーツの入手が困難なケースがあり、取り寄せるのに長く待つ場合があるため注意が必要です。
混んでいる
予約が混み合っている時には、前の対応が終わるまで順番待ちとなってしまいます。一般的に、車検が混む時期というのは、販売台数が多い時期なので、年末年始や3〜4月は特に時間がかかる可能性が高くなります。
それでも、週末を避けると混雑が緩和される可能性があるため、そこを狙ってスケジュールを組むのも一つの方法です。
整備士が少ない
自動車整備士の数は減少し続けており、業界全体で問題視されています。このような状況の中で人材の奪い合いが起き、ディーラーやチェーン展開している車検専門店などでは整備士を確保できたとしても、小規模な整備工場では慢性的な整備士不足に陥っているケースが多く見られます。
整備士の数が不足していると作業量に限界があるため、それだけ時間がかかってしまいます。
車検の時間を短くするための工夫
車検の時間を短縮するためには、業者の選択やスケジュールの組み方など、ユーザー側で工夫することが必要です。ここからは、できるだけ短時間で車検を終わらせるためのポイントについて、解説します。
大手の業者に依頼する
大手の自動車販売店に依頼することで車検の時間を短くできる場合があります。近年は、ライバルの業者を意識して、車検のスピードに力を入れている所が増えているからです。スタッフの数も充実している場合が多いので、迅速な対応が可能となり、当日に作業が完了するケースも珍しくありません。
また、単に時間を短くできるだけでなく、サービスの質の高さや、購入・売却といった車にまつわるトータルなサポートが受けられるというメリットもあります。
事前の確認と予約
車検を受ける際には、事前に見積もりをとって、どのような整備や部品の交換が必要であるのかを、確認しておいた方が良いでしょう。その後に予約を入れることによって、全体のスケジュールを把握しやすくなり、追加の作業が発生して慌てるような事態を避けることが可能です。
業者側も、余裕を持ったスムーズな対応が可能となるので効率が良くなり、結果的に時間の短縮につなげられます。
1ヶ月前から準備する
車検の満了日ギリギリになって慌てないためにも、1ヶ月程前から準備することが大切です。作業は受付順に行われるため、満了日が間近に迫っている時に予約を入れようとしても、後回しにされたり、予約そのものを断られたりして「車検切れ」となる恐れがあります。
1ヶ月程前に予約を入れて準備をしておけば、希望通りのスケジュールで車検を受けやすくなるでしょう。
普段からメンテナンスを行う
普段からメンテナンスをしっかりしていれば、車検にかかる時間を短縮できます。なぜなら、たとえ不具合があったとしても早い段階で発見でき、修理時間も短縮できるからです。
整備や修理が必要な箇所が少なければ、最低限の整備だけで済むので、短時間で車検を終わらせることが可能になるでしょう。
時短だけでなく、費用を抑えるためにも、常に車を良い状態に保つように心がけるべきです。
車検専門店に依頼する
車検を短時間で終わらせるためには、やはり業者選びが非常に重要となります。その中でも車検専門店は車検に特化した業者なので、短時間で作業を行うノウハウを持っており、対応するスタッフの数も充実している傾向があります。
最短で1時間ほどで車検を終了させることも可能なため、時短を重視するならば、車検専門店に依頼することが良い選択肢となるでしょう。
まとめ
車検にかかる時間とその理由、時間を短縮するための工夫について解説しました。スムーズに車検を終わらせるためには、早めの準備や普段からのメンテナンスなど、すぐにできる工夫が多いことがわかったかと思います。
少し面倒だと思うかもしれませんが、車を良い状態に保つことで、安心してカーライフを楽しむことができるでしょう。