個人事業主として事業を運営していると、車が必要になる場面は少なくありません。営業活動や配達、顧客訪問など、車は重要なビジネスツールとなります。ただし、車の購入にはまとまった資金が必要であり、維持費や管理の負担も小さいものではありません。そこで注目したいのが「カーリース」です。
カーリースは、車を購入する代わりに一定期間借りるサービスであり、特に個人事業主にとって多くのメリットがあります。この記事では、個人事業主がカーリースを利用するメリットをはじめ、注意点や審査基準などを詳しく解説します。
目次
個人事業主にこそカーリースをおすすめする理由
個人事業主にカーリースがおすすめである理由として、以下の4点が挙げられます。
- 月々定額かつ経費計上できるから
- 初期費用をかけずに車を持てるから
- 管理が楽だから(サポートがつくから)
- 最後は返却するだけで良いから
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
月々定額かつ経費計上できるから
カーリースのメリットのひとつに、毎月定額の支払いで利用できることが挙げられます。一般的にカーリースの月額料金には車両代金のほか、車関連の税金や自賠責保険といった法定費用、車検費用、メンテナンス費用といった維持費のほとんどが含まれています。
そのため車検や修理などでの予想外の出費がほぼなくなり、事業資金の管理が容易になることは個人事業主にとってメリットといえるでしょう。
また、車を購入した場合は固定資産として計上し減価償却していく必要がありますが、リースした車はあくまでも「借りている」ものであるため固定資産にはなりません。減価償却の必要がなく、リース料金は一括で経費計上できるため、節税効果が期待できることに加え経理処理の手間が省けるメリットもあります。
初期費用をかけずに車を持てるから
車を購入する場合、頭金や登録諸費用などで最低でも10万円以上の初期費用が必要です。一方で、カーリースでは頭金なしで利用できることに加え、登録諸費用もリース料金に含まれているため初期費用0年で事業用の車を調達できます。
これから事業を始める方や資金に余裕がない場合でも、月々の売上からランニングコストとして定額料金を支払うだけで車を利用できるため、新規事業者にも適した選択肢といえるでしょう。
管理が楽だから(サポートがつくから)
カーリースでは、毎年納税義務がある自動車税種別割の納税は、カーリース会社が行います。また、車検時期やメンテナンスの時期が近付くと知らせが届くなど、サポートがあるので車の管理がかなり楽になるでしょう。
ほとんどのカーリース会社が契約者向けのサポート窓口を設けているので、車のトラブルの際なども気軽に相談できます。車に関する面倒な部分はカーリース会社に任せ、自身は事業に集中できるのも個人事業主にとってのカーリースのメリットといえるでしょう。
最後は返却するだけで良いから
購入した車を手放すとなれば下取りや買取りに出したり、廃車手続きをしたりとかなりの手間がかかります。その点カーリースでは契約満了になるとそれまで乗っていた車をリース会社に返却するだけと、手間がかかりません。下取り先などを探す必要もないので、精神的にも楽になるでしょう。
さらに新しい車の購入もカーリース会社が代行するため、契約者は好きな車を選ぶだけでよく、乗り換えもスムーズです。
覚えておきたいカーリースの注意点
カーリースには多くのメリットがありますが、以下のような注意点もあります。
- 中途解約は原則不可
- 走行距離制限ありの場合がある
- 原状回復義務がある
- 審査がある
詳しく解説します。
中途解約は原則不可
カーリースでは、原則として中途解約ができません。事業環境の変化や収益悪化などで車が不要になった、またはリース料金の支払いが厳しくなったという場合でも契約期間中は支払い義務があります。
事故でリース車両が全損する、盗難に遭ったなど車が使用できない状態になった場合はその時点で強制解約となりますが、その際にはリース残期間の一括支払いなど、高額な違約金の支払いが発生することがほとんどです。
走行距離制限が設定される場合がある
車を返却する一般的なカーリースでは、多くの場合走行距離制限が設定されています。制限距離はプランによって異なりますが、一般的な使用であればそれほど神経質にならずに使える程度の距離設定になっているケースがほとんどです。
ただし、個人事業主が業務で使う場合、業種によっては注意が必要です。配送業務など、走行距離が長くなりがちな場合は制限距離を超過するリスクがあるためです。
設定された制限距離を超えた場合には、超過した距離に応じた追加料金の支払いが求められます。そのため、配送業など走行距離が長くなる業種の場合は走行距離無制限のカーリースを選ぶといいでしょう。
原状回復義務がある
カーリースは車の返却が前提のサービスであり、契約満了時には車を原状回復したうえで返却しなければなりません。また、複数年にわたる長期契約が一般的ですが、車は乗っている時間が長いほど自損・他損を問わず事故のリスクが高くなります。
経年劣化の範囲を超える傷やへこみなどのダメージがあった場合には、返却時に原状回復費用を得請求されることがあるほか、車の価値が下がり残価との精算が発生する可能性も否定できません。
原状回復にかかる費用をカバーするために車両保険に入るのもひとつの方法ではありますが、保険費用が高くなるため、リスクとコストのバランスを見て検討することが大切です。カーリースのプランによっては、一定額までであれば車の修理費用がカバーできるものもあるので、そういったプランを選ぶのもひとつの方法でしょう。
審査がある
カーリースは、ローン同様審査に通過しなければ利用できません。財務状況に問題がある、信用情報に金融事故情報の掲載があるなど、何らかの理由で審査に落ちるケースもあるため、申し込めば必ず利用できるわけではない点は理解しておきましょう。
カーリースと購入のコストの違い
ここで、人気の軽スーパーハイトワゴン「N-BOX」を例に、カーリースで利用した場合と購入した場合でどの程度コストに差が出るのかをシミュレーションを通して確認してみましょう。
初期費用の違い
【シミュレーション車種:ホンダ N-BOX ベースグレード2WD 車両本体価格168万9,600円】
カーリース | ローン購入 | 一括払い購入 | |
---|---|---|---|
車両代金または頭金 | なし(月額料金に含まれる) | 30万円 | 168万9,600円 |
登録諸費用 | なし(月額料金に含まれる) | 11万1,600円 | 11万1,600円 |
合計 | 0円 | 41万1,600円 | 180万1,200円 |
※金額は2024年11月21日時点、ホンダ「N-BOX」セルフ見積りにて算出
※12月登録の前提
車を購入する場合、頭金や登録諸費用などまとまった初期費用が発生します。一括購入の場合はもちろんですが、ローン購入でも頭金が必要になるケースが多く、最低でも数十万円の資金を準備しなければなりません。
ホンダ「N-BOX」の場合、一括購入では車両本体価格として約169万円が必要であり、さらに登録諸費用や税金を含めると合計180万円以上の出費になります。
ローン購入の場合でも頭金30万円程度に加え、登録諸費用として約11万円が必要です。頭金なしのローンを利用した場合でも登録諸費用は別途支払うのが一般的なので、完全に初期費用なしにはなりません。
一方カーリースでは、頭金は不要です。さらに月額料金に登録諸費用も含まれているため、乗り出し時にまとまった資金を準備する必要がありません。そのため、資金繰りに余裕がない新規事業者や初期投資を抑えたい個人事業主には非常に有利といえるでしょう。
維持費の違い
【シミュレーション車種:ホンダ N-BOX ベースグレード2WD 車両本体価格168万9,600円】
カーリースの場合 | ローン購入の場合 | 一括払い購入の場合 | |
---|---|---|---|
月額リース料 / ローン返済額 | 3万1,000円 | 3万1,800円(初回のみ3万2,199円) | 0円 |
オイル交換(年2回実施) | 無料(月額料金に含まれる) | 約4万6,000円 | 約4万6,000円 |
車検費用(法定費用含、2回) | 無料(月額料金に含まれる) | 約9万円 | 約9万円 |
軽自動車税種別割(初年度を除く4年) | 無料(月額料金に含まれる) | 4万3,200円 | 4万3,200円 |
5年間合計 | 186万円 | 219万9,199円 | 17万9,200円 |
月額平均 | 3万1,000円 | 3万6,653円 | 2,986円 |
※カーリースの月額料金は例として「carsマイカー定額」を使用
※カーローンの返済額は2024年11月21日時点、ホンダ「N-BOX」セルフ見積りにて算出
※オイル交換費用は総務省統計局の小売物価統計調査(2024年10月)より
※車検費用は車検専門店を利用した場合の概算
カーリースと購入では、維持費にも大きな違いがあります。カーリースの場合、月額料金には自動車税種別割や重量税、自賠責保険料、さらには車検代やメンテナンス費用まで含まれていることが多いため、大きな出費なく安定した支払い計画を立てることができます。
対して購入の場合は維持費を別途負担しなければならず、不規則な支出が発生し資金繰りに頭を悩ませる事態になる可能性が否定できません。
上記のシミュレーションにおいて、カーリースの月額料金とカーローンの月々の返済額にそれほど大きな差はありません。ただし、カーリースでは税金などの維持費が月額料金に含まれているのに対し、カーローンではその都度出費があることがわかります。
カーリースなら月々定額でずっと利用でき、納税や車検の際の出費に頭を悩ませることがありません。キャッシュ・フローが安定し、資金繰りもしやすくなるでしょう。
総支払額の違い
【シミュレーション車種:ホンダ N-BOX ベースグレード2WD 車両本体価格168万9,600円】
カーリースの場合 | ローン購入の場合 | 一括払い購入の場合 | |
---|---|---|---|
総支払額 | 186万円 | 219万9,199円 | 180万1,200円 |
※カーリースの料金は例として「carsマイカー定額」を使用
※カーローン・一括払いの金額は2024年11月21日時点、ホンダ「N-BOX」セルフ見積りにて算出したものに、上記「維持費の違い」にて算出した維持費を追加した金額
上のシミュレーションではディーラーローンを利用している前提であり、実質年率4.9%で利息が高いため若干カーリースの総額がローンよりも安くなっていますが、これよりも実質年率が低い金融機関のマイカーローンなどの場合は、カーリースの総額が高くなることがほとんどです。
利用するローンの種類やカーリースのプランにもよりますが、総支払額については、カーリースよりも購入の方が安くなることも多いといえます。これは、カーリース料金にはリース会社の利益分が上乗せされているためです。総支払額の安さにこだわるのであれば、現金一括払いに勝る方法はありません。
ただし、カーリースの料金には税金やメンテナンス費用などの維持費も含まれています。さらに手間もかからないことを考慮すると、個人事業主にとって単純なコスト比較だけでは測れない価値がある、といえるのではないでしょうか。
個人事業主とカーリースの審査について
カーリースは、審査に通過しないと利用できないのは先述のとおりです。では、個人事業主におけるカーリースの審査とはどのようなものなのか、見ていきましょう。
個人事業主はカーリース審査で何を見られる?
カーリース会社が審査を行う際には、「契約期間を通し、安定してリース料金を支払えるかどうか」を主な基準として判断します。個人事業主や自営業者の場合、収入が安定しないとみなされることが多いため、会社員や公務員に比べて若干厳しい基準が適用される傾向があるといえるでしょう。
しかし、適切な準備を行えば十分に審査を通過することが可能です。以下に、具体的な審査項目について説明します。
年収
年収はカーリースの審査において、重要視される審査項目です。一般的には年収200万円以上が審査通過の目安とされていますが、これはひとつの目安に過ぎません。年収200万円以下で通過するケースがある一方、200万円より高くても審査に落ちることもあります。
カーリースの利用可否は年収のみで判断されるわけではなく、複数の審査項目を考慮し総合的に判断されます。また、審査の対象になる金額と年収とのバランスも審査に影響することも理解しておきましょう。
属性(雇用形態など)
属性も、カーリースの審査に影響を与える項目のひとつです。カーリースは一般的に複数年にわたる長期契約であるため、この先も安定してリース料金を支払い続けられるかどうかが重視されます。
そのため、安定性が高い問いされる正社員や公務員は有利になりがちで、個人事業主やフリーランスの場合は若干不利な傾向があることは否めません。ただし現在ではかつてと比較するとさまざまな働き方が認められるようになってきたこともあり、個人事業主であることを理由に審査のハードルが上がる、というケースは減りつつあります。
信用情報
信用情報は、カーリースの審査では必ずチェックされます。過去にクレジットカードの支払い遅延や自己破産などの金融事故がある場合は、信用情報機関に事故情報が登録されているため審査通過はかなり難しい、といわざるを得ません。
金融事故の情報は通常5〜7年程度で抹消されるため、不安がある場合は事前に自身の信用情報を確認しておきましょう。事故情報が掲載されている状態なら、消えるまで待つことをおすすめします。
保有資産
保有している資産も、審査時に考慮される場合があります。審査に通過できるか否かのライン上にいる場合、不動産や預貯金などがあると有利になる可能性が期待できるでしょう。
ただし、保有資産は補助的な項目であり、何よりも優先されるものではありません。審査に通るかどうかというケースに限り考慮される、というものです。年収や信用情報などで十分利用が可能であると判断された場合に、資産がない点が問題視される、ということは原則ありません。
借入状況
既存の借入額やローン返済状況も、チェック対象です。特に返済負担率(年収に占める借入返済額の割合)が30〜35%以上になると、新たな契約を結ぶことが難しくなる傾向があります。
返済負担率はその審査の対象になっている金額だけではなく、すべての借入で判断されるため、ほかの借入が多いとカーリースの審査には通りません。
そのため、できるだけほかの借入を返済し、返済負担率を下げておくことが重要です。
審査に通りやすくするためのテクニック
審査対象になる金額が安くなるほど、審査に通りやすくなるといえます。ここでは、審査対象になる月額料金を安くするためのテクニックとして、以下の4つのポイントを紹介します。
契約期間を長めに設定する
カーリースの月額料金は、総額を契約月数で割って算出します。そのため、契約年数が長いほど月額料金は安くなるのです。できるだけ長い契約年数に設定するのも、審査に通りやすくするための対策のひとつといえるでしょう。
ただし、契約年数が長くなるほど中途解約のリスクも高くなる点には、注意が必要です。月額料金とのバランスを見ながら、自身の事業計画に合わせた契約期間を検討することをおすすめします。
安い車種を選ぶ
高額な車種ほど月々のリース料金も高くなるため、それに比例して求められる年収基準や信用度も上昇します。審査に不安がある場合は、比較的価格帯の低い車種やグレードを選ぶことで審査通過率が上がる可能性があります。
ボーナス併用払いを設定する
ボーナス払いを設定して、月額料金を抑えるのもひとつの手段です。
ただし、個人事業主の場合は基本的にボーナスがないため、ボーナス払い分の資金管理には注意が必要でしょう。また、ボーナス払いの設定があるカーリースであっても、個人事業主の場合はボーナス払いが選択できないケースもあります。
頭金を用意する
カーリースでは基本的に頭金は不要ですが、一部のリース会社では頭金を支払って、月額料金を安くできる場合があります。
手元にまとまった資金がある場合には、頭金を入れることも検討してみましょう。
事業用におすすめのカーリース車種5選!
個人事業主が事業用の車を選ぶ際には、用途や業種に応じた適切な車種を選ぶことが重要です。ここでは、配達業務や営業活動など、それぞれの目的に最適な車種を紹介します。
ダイハツ ハイゼットカーゴ
ダイハツ「ハイゼットカーゴ」は、広い荷室と優れた積載能力を持ち、積載量は軽キャブオーバーバントップ※を誇ります(2021年12月時点、ダイハツ調べ)。
また、リヤシートを足元に収納することで、フラットな状態で荷室を拡大できる「水平格納式リヤシート」を採用。助手席の前倒し機構と合わせて使用すれば2,650mmものスぺースが確保できるので、ラグなどの長さのある荷物も余裕をもって積み込めます。
低燃費で価格帯もリーズナブル、ビジネス用途におけるコストパフォーマンスが非常に高い1台です。
【carsマイカー定額】ダイハツ ハイゼットカーゴの詳細はこちら!
スズキ キャリイ
スズキ「キャリイ」は軽トラックトップ※の荷室フロア長と荷室床面地上高を誇ります(※2024年4月時点、スズキ調べ)。板材や角材なども楽に運べることに加え、低い荷台なので荷物の積み下ろしがしやすいのも大きな魅力といえるでしょう。農業や漁業を営む方の支持を集めるのもうなずけます。
キャビンスペースを広く取り、快適さを高めた「スーパーキャリイ」もラインナップ。スーパーキャリイは運転席のシートスライド量180mmを実現、さらに最前端までスライドしなくてもリクライニングが可能です。
トヨタ ハイエースバン
トヨタ「ハイエースバン」は、大容量の荷室と優れた耐久性で、多くのプロフェッショナルから支持されている万能型バンです。荷室長は3,000mmを確保、大型機材や大量の商品も一度に運搬可能です。また、多彩なボディサイズとルーフ形状が選べるため、それぞれの業種や用途に合わせた最適なモデルを選択できます。
安全性能としては「Toyota Safety Sense」が全グレード標準装備であり、衝突被害ブレーキや車線逸脱警報などが搭載されています。さらに、高速道路での安定した走行性能や快適な乗り心地も魅力であり、長距離移動が多い個人事業主にもおすすめです。
【carsマイカー定額】トヨタ ハイエースバンの詳細はこちら!
トヨタ アクア
トヨタ「アクア」は、営業車として非常に人気の高いハイブリッド専用コンパクトカーです。WLTCモードで34.6km/L(グレードによって異なる)という優れた燃費性能を誇るため、営業で頻繁に移動しても燃料コストを大幅に削減できるでしょう。
エントリーグレードであってもスマートフォンと連携できるディスプレイオーディオが標準装備であり、利便性も十分です。
ホンダ フリード
ホンダ フリードは5ナンバーサイズで大きすぎず、使い勝手の良いミニバンとして人気があります。コンパクトながら広い室内空間を持ち、シートアレンジによって乗員数とラゲージスペースを柔軟に調整できるため、小規模チームで活動する個人事業主にも最適です。
大開口のスライドドアと低床フラットフロアを採用しているので、高齢者や小さな子供も乗り降りがしやすいのもポイントといえるでしょう。アトリエに来訪されるお客様の送迎に使用する、というようなニーズも満たしてくれる1台です。
まとめ
個人事業主にとってカーリースは、イニシャルコストなしで事業用の車を導入できることに加え節税効果が期待できる、経理処理が簡単になるなどメリットが多く、本業へ集中できる環境づくりにつながる車の乗り方といえます。
一方、中途解約が不可であることや総支払額が高い傾向があるなどの注意点もあるため、メリットとデメリットの双方を理解したうえで、自身のニーズと照らし合わせて慎重に判断することをおすすめします。