マーケティング
1件の入庫から継続した収益アップの機会につなげる方法を解説
投稿日:2021/07/07更新日:2021/07/09
「収益アップ」と聞いてどのような手法が思いつくでしょうか。まずは新規顧客の獲得が挙がるでしょう。
できるだけ多くのお客様から修理や車検の依頼を受けることも大切ですが、新規顧客ばかりに気を取られていては収益アップのチャンスを逃してしまうかもしれません。
そこで今回は、車検や鈑金塗装修理の入庫から継続的に収益アップの機会につなげる方法を解説します。
ただ漫然と作業をやってはいないか?
鈑金塗装修理や車検の依頼があった時どのように対応していますか?
依頼された修理や点検が完了したらそれで終わりでしょうか。
ところが、1件の入庫には多くの提案・販売機会があります。
たとえば、オイル交換や車検、タイヤ、バッテリーの販売、自動車保険や車買取、中古車販売などです。
ここに挙げただけでも、1件の入庫から7種目もの提案機会が生まれています。
たとえば月に5台の入庫がある場合、5台×7種目=35種目の提案機会があることになります。
1年で考えると、35種目×12ヶ月=年間420種目もの収益アップの機会があるという計算になります。
■提案機会・種目
- 車検
- オイル交換
- タイヤ
- バッテリーの販売
- 自動車保険
- 車買取
- 中古車販売
■提案機会
5台×7種目=35種目/月
35種目×12ヶ月=420種目/年
では、年420種目もある提案機会をどのように得ればいいのでしょうか。それを見極めるために必要なのが「顧客情報」です。
修理や車検は、それ1件の依頼で利益が発生するだけではなく、お客様の情報を得ることができる貴重な機会なのです。
修理や車検の入庫で得られるお客様の情報
修理や車検は情報の宝庫です。お客様とどのような話をするかにもよりますが、ざっと挙げるだけでも下記の情報を得ることができます。
修理や車検を通じて得られる情報(一例)
- お客様の懐具合
- 乗換時期
- 次に乗りたい車
- タイヤ、バッテリーの製造年月日
- タイヤの残溝
- バッテリーの状態
- エンジン、足回りの状態
- 外装状態(キズ・凹み)
- コンピュータのエラーの有無
- 現在の走行距離
- 現在の自動車保険の付保内容
- 現在の住所
- 現在の世帯情報
- 現在の勤務先
- 現在の趣味
鈑金塗装業であっても、これらの情報をしっかりと収集することで、多種目取引を実現できます。
継続した収益アップ機会の創出は車検案内から
車検の案内には、大きく分けて「対面」「電話」「DM」の3つがあります。その中で最も重視したいのは、相手の表情が見える「対面」です。
なぜなら、お客様の希望や悩みを聞くことができる絶好の機会だからです。
そして、この対面のまたとないチャンスが、鈑金塗装をはじめとした修理のタイミングです。
修理を請け負う前後はお客様と顔を合わせることができますので、この機会を有効活用してまずは車検を獲得することが最重要課題となります。
修理の請負時と納車のタイミングで行うこと
1つの依頼から次の依頼へとつなげるためには、それぞれのタイミングで異なるアプローチが必要です。
車検の残りの月数によって会話の内容を変化させ、それらをマニュアル化して社員に訓練してもらうことで継続的な収益アップの道筋をつくります。
鈑金塗装修理の請負時(引き取り時)に行うこと
鈑金塗装修理のための損傷チェックや書き込みが終わったら、コピーした車検証を見ながらヒアリングします。
そこで、車の安全性の回復を確かなものにするために、メカニカルチェックと電子デバイスチェック(整備点検、コンピュータ診断)を行うことを伝え、その理由もしっかりと説明します。
これにより自然と車検の話に触れることができます。
ただ、ここで大切なのは、対話はあくまでお客様目線である点です。
業者側の利益優先が伝わってしまう会話は、お客様にとっては苦痛でしかないので、注意が必要です。
車検直後〜半年程度の場合
車検まで時間がある段階では、次回の車検の話をしてもお客様には響きません。
そこで、「前回はどこで車検を受けたのか」「どんな車検を受けたのか?」といった会話から入り、お客様の業者との付き合い方や関係性を探るにとどめておきます。
今後の提案のための下調べのイメージです。
車検半年〜1年程度経過の場合
次回の車検に向けて「まだ車を乗り続けますか?」という質問を出し、お客様の反応によって対応を変えます。
「乗り続ける」場合
今回の鈑金塗装修理に、無料点検とオイル交換のサービスをつけます。
人は何かをしてもらうとお返しをしようと思う返報性という心理があるため、今後の車検の予約がとりやすくなります。
「次の車検までに乗り換える」場合
この場合、鈑金塗装修理をすべきかどうかにも影響が出てきます。
修理をせずに乗り換えたほうがお客様にとってお得な可能性がある場合もあります。
早期のお見積もりを約束して車を引き取りましょう。
その後、事前にお聞きしたお客様情報から状況を鑑み、乗り換えたほうが明らかにお得な場合は、しっかりとその内容を提案します。
車検直前の場合
車検直前のお客様は提案の絶好の機会です。引取時に「一緒に車検もどうですか?」「鈑金塗装と同時に車検を受けると、車検が安くなります」と声掛けします。
特に鈑金塗装修理は、内容によっては記録簿が必須であるというコンプライアンスの視点から、同時に24ヶ月点検を提案できる強みもあります。
「修理と同時に車検を受けていただければ24ヶ月点検費用は無料にできます」といった提案も良いでしょう。
納車時の提案で収益の機会につなげる
納車時はどうでしょうか。納車は、壊れた車を修理した技術力をアピールできる機会です。
お客様の「キレイに直っているか?」という期待値が最高潮に達するタイミングでもあり、ここで自社の技術力の価値を伝えることができれば、次の提案機会を得ることができます。
■鈑金塗装後の納車時にお客様に伝えるべき、次につながる情報
・今回の鈑金塗装修理箇所の確認
・オイル交換の時期
・定期点検の到来時期
・車検の到来時期
・下記無料点検の結果
└水周り、オイル周りの劣化度合い
└タイヤの空気圧
└足回りの点検結果
└下回りの点検結果
└電装系の点検結果
└バッテリーチェック結果
└OBDⅡスキャン結果
・相場情報(お客様が望む場合)
・新車/在庫車のカタログ
・今後の保有意向
ポイントは、今回の修理箇所についての説明をしっかりと行うことです。
この時、修理箇所に不具合が生じた場合は無償でお直しすることを伝えると、自社に連絡してもらうハードルを下げることができます。
また、修理と同時に無料点検を行った旨を伝え、その内容も説明します。
たとえば、オイル交換の時期について解説し、交換時期が迫ってきたら連絡する旨を伝えられれば、次の接点を確かなものにできます。
ほかにも、バッテリーチェックの結果を伝え、製造年から4年が経過している場合は交換の時期が近づいているという注意喚起(アラート)を行い、バッテリートラブルの際は現場対応できる旨も伝えるとよいでしょう。
タイヤの空気圧の調整と溝の確認を行った結果報告でも、次につながる提案ができます。
ただし、この時はあくまで説明とアラートにとどめます。お客様が、押し売りと感じてしまわないよう心掛けましょう。
「車のことなら、この会社に任せておけばいい」という印象をお客様に与えることで信頼を獲得するのです。それはそのまま顧客満足度の向上につながります。
このように、納車時だけでも「オイル交換」「バッテリー交換」「タイヤ交換」の接点機会を創出することができます。
時期が来たら連絡をすることで、実際に交換してもらえる可能性が高くなり、車検の依頼の下準備にもなります。
まとめ
ここまでの解説で、鈑金塗装の修理や車検は「作業が終われば終了」ではなく、新たな機会創出の場であることがわかります。
それには事前にヒアリングした「情報」に向き合い、得られた情報からタイミングを合わせてお客様に必要な提案をすることが重要です。この繰り返しが、継続的な収益アップの機会創出になります。
つまり、お客様のカーライフに真摯に向き合うことが、結果として利益につながるのです。