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OBD車検&点検のメニューを作ろう!これからの収益アップ方法

投稿日:2021/07/21更新日:2021/07/21

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今回は、自動車整備業における経営コンサルタントである、株式会社ティオ代表「山本  覚」氏による講義の一部を紹介します。

講義に実際に参加された方からは
特定整備を使った運営方法が現実のものとしてとらえやすく、参考になりました。
点検入庫の効果性がわかりやすく感じました。車検の入庫よりも点検入庫が車検回帰に役に立つとの教えも参考になりました。
と、講義を評価する声がありました。

これからの特定整備時代における収益アップの方法として、今回はOBD車検、OBD点検のメニュー作りの事例を取り上げていきます。

記事協力:株式会社ティオ 代表取締役 山本 覚
略歴
新車ディーラー(マツダオート横浜)で営業職を経験した後、カーアフター業界専門コンサルタント会社に営業職として入社し、仙台、大阪、福岡の営業所長を経て指導部部長を8年務める。1999年(平成11年)に独立し、カーライフビジネス業界専門経営コンサルタントとして40年近くにわたり、カーアフター業界専門に実務改善指導・部門再構     築指導、人材開発指導・マニュアル開発・諸規定策定等担当。また、カーメーカーおよび業界団体、関連企業等の依頼による職能別・階層別・テーマ別の各種セミナー・講演会等を担当。
詳しくは http://www.tio21.co.jp/administration/profile.pdf

車検も単品から松竹梅の品揃えで単価アップ

商品開発をしていく上でのポイントとして、「時間商品」が挙げられます。

お客様は速さを求めているため、「開始から終了までの時間の短さ」が売りの車検など、車検時間を短くできるサービスも商品になります。

この「時間商品」をベースにして、お客様が求める「価値商品」、たとえば安心や快適などのサービスを加えていきます。

すると、次のような松竹梅のメニュー作りを考えることができます。

・梅については、定期点検+OBD点検
・竹については、梅+液油脂類交換
・松については、竹+快適施工

お客様が選べるメニュー作りを実施することにより、お客様一人ひとりで違う幅広いニーズに対応できます。

結果として、お客様満足度や商品単価のアップなど、双方にとってメリットのある品揃えが可能となります。

また、OBD車検は2024年(令和6年)からの実施ではありますが、今から実施し安心・安全な車検整備を提供することで増収増益も期待できます。

OBD車検用のメニュー例紹介

OBD車検とは、OBD(車載式故障診断装置)のコネクタに法定スキャンツールを接続して、各電子制御装置の状態をチェックし、国が定めた基準に合致しているかを確認する検査を指します。

ESC(横滑り防止装置)やABS(アンチロックブレーキシステム)、そしてレーンキープアシストや自動ブレーキなどの運転支援装置、排気ガス装置などの不具合の有無をOBDを用いて確認します。

メニュー項目は以下の通りです。

【メニュー項目】
1.法定24ヶ月点検(ガソリン車/HV・PHV・EV車推奨点検)
2.車載コンピュータ診断
3.車検6ヶ月後の安心点検
4.バッテリー機能診断
5.タイヤ診断
6.ブレーキフルード交換
7.前輪ブレーキ清掃・給油・調整
8.パーキングブレーキ調整
9.リモコンキー電池交換
10.エンジンオイル交換
11.オイルエレメント交換
12.タイヤ窒素ガス充填
13.室内消臭・除菌施工
14.下回りスチーム洗浄
15.四輪アライメント測定
16.エンジン内部洗浄注入
17.車検半年後エンジンオイル交換
18.車検1年後法定12ヶ月点検
※上記にHV・PHV・EV車推奨点検料を+3,000円

上記のメニューにおける1〜3が基本点検となり、以下のような松竹梅の3種のメニューを考えることができます。

  • 梅:基本点検+4〜8
  • 竹:基本点検+4〜14
  • 松:基本点検+4〜18

なお、OBD車検用のメニュー例として紹介していますが、上記メニューは実際に使用されているものとなります。

車検単価アップを目的としてメニューを設定しており、車検基本点検に「OBD診断」を設けています。

また、車検からの囲い込みを意識して作業内容を決定しています。

実績は「松:4割」「竹:5割」「梅:1割」という割合になっており、実績例は以下の通りです。

・年間車検:約1,000台
・測定台数:約900台(車検入庫車両の約90%)
・台単価:3,000円
・測定売上:2,700,000円
・実績年数:4年間の実績

OBD点検整備も松竹梅の品揃えを用意する

OBD(車載式故障診断装置)を用いて故障やトラブルを起こさないよう車の状態をチェックするOBD点検に関しても、お客様が選択できるように松竹梅のメニュー項目の設定が必要です。

また、OBD点検は2021年(令和3年)10月から実施されるため、すぐにメニュー作りに取り掛かる必要があります。

メニュー項目は以下が挙げられます。

【メニュー項目】
1.法定12ヶ月点検(ガソリン車/HV・PHV・EV車推奨点検)
2.車載コンピュータ診断
3.点検6ヶ月後の安心点検
4.バッテリー機能診断
5.前輪ブレーキ清掃・給油・調整
6.タイヤ診断
7.エンジンオイル交換
8.オイルエレメント交換
9.ワイパーブレード交換
10.四輪アライメント測定
11.室内除菌・消臭
12.点検6ヶ月後エンジンオイル交換
※上記にHV・PHV・EV車推奨点検料を+3,000円

「OBD車検用のメニュー」と同じく、項目1〜3が基本点検となり、以下のような松竹梅の3種のメニューが考えられます。

  • 梅:基本点検+4〜6
  • 竹:基本点検+4〜9
  • 松:基本点検+4〜12

HV・PHV・EV車推奨点検チェックシートがありWEB上でダウンロード(※1)が可能です。

電動化の機運が高まっている今こそ、自社のメニューに加えてみてはいかがでしょうか。

※1 ダウンロード元:HV・PHV・EV車推奨点検チェックシート

「日本自動車整備振興会連合会」公認のチェックシートであり、標準作業点数も設定されているため、現場での利用をおすすめします。

チェックシートをうまく活用できれば、お客様の安全を守れると同時に単価アップを目指せます。

なお、2030年代中ごろまでにガソリン車販売が事実上禁止となり、電動車が加速度的に増加すると予想されています。※2020年度(令和2年度)の電動車販売比率37.2%(過去最高)

この機会を逃すことなく「推奨点検」に取り組むことで、お客様に「安全・安心」を提供することができます。

こうしたチャンスを逃さない経営こそが、顧客志向の経営につながるのです。

定期点検に取り組む効果

定期点検に取り組むことで下記5つの効果が期待できます。

・売上利益のアップ
└点検料はもちろん、お客様が気づきにくい車両内部の状態をお知らせし、付随整備の売上が期待できます。

・接触頻度の向上
└お客様との絆づくりを深耕させ、身近な存在に感じてもらえます。

・顧客管理の強化
└顧客管理を適切に行うことでお客様の脱落防止ができるうえ、車検入庫率アップが見込めます。

・保守管理の継続
└お客様に安全で安心なカーライフの提供ができます。

・定期点検実施客の車検回帰率向上
└株式会社ティオがコンサルティングする、とある工場では定期点検を受けた87%のお客様がその工場にて車検を実施されました。

この数字から定期点検を実施したお客様の車検回帰率が高いことがわかります。つまり、定期点検は「囲い込み商品」とも言えます。

定期点検がお客様との接触頻度を向上させ、車検実施につながるのです。

OBD車検・点検に伴うフロントの対応

フロント対応のキーポイントとして、「丁寧な外観確認」「徹底的な問診」「分かりやすい結果説明」の3つが挙げられます。

■丁寧な外観確認
1.センサー部位などの凹み・キズの有無
2.タイヤの偏摩耗
3.フロントガラスのキズ

これらはお客様が気になる重要箇所です。抜かりない丁寧な外観確認を行うことで、お客様からの信頼を得られます。

また、外観確認の時点で特定DTC(OBDの故障コード)を予測します。予測される場合はその旨を説明しましょう。

■徹底的な問診
1.車に強い衝撃を与えていないか
2.車が真っ直ぐに走っているか
3.チェックランプが点灯することはないか

キズなどが無くても徹底的に確認します。車の外観からは判断できない問題を発見し、お客様に正しく説明することで追加整備が期待できます。

■分かりやすい結果説明
1.特定DTCの有無とその内容
2.特定DTCの有無と必要な措置
3.作業時間と料金

車検に通らないことや、必要な整備を伝えて了解を得ましょう。
その際、専門用語が多く出てくるので、車にくわしくないお客様でもわかるような説明が重要です。
そして、お客様の理解度を確認しながら、車検を通すために必要な事項を不足なく伝えましょう。

OBD車検・点検が伴う作業現場ですべきこと

作業現場では次の3点に慣れることが大切です。

・コネクターに慣れる
・スキャンツールの操作に慣れる
・FAINESに慣れる

OBD(車載式故障診断装置)のコネクターの取り付け位置はメーカーや車種によって異なるので、位置関係などに慣れることで接続時間を短縮できます。

また、操作を間違えないよう、スキャンツールの操作手順や表示される単語などにも慣れることが必要です。

整備書や配線図、故障事例などは整備情報提供システムの「FAINES」で閲覧できます。

操作や格納部位などを習得することで、素早い診断や正しい整備を行えるようになり、作業効率がアップします。

作業現場では明日からでもOBD診断を実施し、台数をこなして経験を積むことが重要です。

また、台数をこなせば不具合の傾向をつかむこともできます。

本格運用に備える意味でもメカニック、フロントで傾向を共有し、迅速に対応できる体制作りが必要です。

OBD車検・点検は問診の重要性が増す

OBD車検やOBD点検では、お客様と「言った言わない」のトラブルを防止するためにも、走行安全装置に関する状態を記録できる問診票を作ることをおすすめします。

また、問診票があることで、誰でも一定以上のレベルで問診を行うことができます

問診は丁寧に行い、質問調にならないようアドバイスを適度に入れます。

問診項目は以下の通りです。

【走行安全装置に関する状態】
・グリルやバンパーを取り外し
└してないorした(理由:       )
・フロントガラスの交換
└してないorした(理由:       )
・下回りの強打
└してないorした(理由:       )
・走行時の直進性
└真っ直ぐ走るor左または右に流れる
・タイヤインチの変更
└してないorした(理由:       )
・車高の変更
└してないorした(理由:       )
・前のバンパーのキズ、凹み等
└ない ある(理由:         )
・チェックランプの点灯
└点いていない 点いている 時々点く 不明

【お車の現状】
・最近の燃費
└変わらない 良くなった 悪くなった
・ワイパーの状態
└良好 作動時に異音がする 水切りが悪い
・エンジンの状態
└良好 異音する 力が無い 音がうるさい 煙が出る かかり悪い
・ブレーキの状態
└良好 異音する 片利き←  →利き甘い その他
・ハンドルの状態
└良好 異音する 揺れる(        kmで)
・ミッションの状態
└良好 異音する ギア鳴りする ショックが大きい 滑る感じがする
・灯火装置の状態
└前照灯→良好 暗い感じがする 方向指示器・ストップランプの球切れあり
・走行フィーリング
└快調 異音する ふわふわする ごつごつする 跳ねる
・リコールの対応
└リコール対応済み リコール未対応
・その他気になる症状 

【ご要望事項】
・エンジンオイルの交換
└希望する 汚れていたら希望する 今回は交換しない
・オイルエレメントの交換
└希望する 汚れていたら希望する 今回は交換しない
・その他要望事項

まとめ

OBD車検の実施はもう少し先のことになりますが、今から準備しておいて損はありません。

OBD車検やOBD点検はお客様にとってもなじみのないものになるので、わかりやすい説明が必要になってきます。

また、作業現場でも作業において慣れが必要になることもあります。

少しずつでも準備を始めることで、お客様への説明や現場の作業についても少しずつ実績を積み重ねていくことができます。

そしてそれが、お客様の安心・安全なカーライフの未来を守ることにつながっていきます。