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整備売上の見える化が可能に!6つの要素から見つける改善策とは?

投稿日:2021/07/29更新日:2023/05/03

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自動車整備業界において、売上アップを目指すためにはどのような手法があるのでしょうか。
結論から言えば、単価と件数だけでは改善活動は困難で、PDCサイクルが回るくらいに細分化する必要があります

本記事では、整備売上を6つの要素に整備売上の構造を分解する手法とそれによる改善活動について詳しく解説します。整備業界で働く方や経営者の方はぜひ参考にしてください。

整備売上の構造を6つの要素に分ける意味

一般的に整備売上は「売上数量×売上単価」で割り出すことができると考えられています。

しかし、「売上数量」と「売上単価」のみを整備売上の要素にしてしまうと、売上を左右する要因が絞られてしまい、行うべき対策が見えにくくなってしまうのです。

そこで、売上の要素をより分解して考えてみましょう。

(入庫機会×対象台数×提案件数×入庫促進×売上単価)×顧客満足度(CS)

上記のように整備売上は6つの要素の掛け合わせで成り立ち、それぞれの要素に対する計画と行動を通じて売上向上を図ることができるのです。

■6要素それぞれの数を増やすための基本行動
売上を決める6要素の中身と、それぞれの要素を高めるための基本行動を確認していきましょう。

・入庫機会
「入庫機会」とは商品の需要を作っていくことを指します。

お客様の車種、年式、季節などに合わせた商品企画、販売企画、イベント開催などに取り組むと、新たに商品を売るための機会を創出できます。

・対象台数
「対象台数」とは誰にどのくらい売るのかという、情報の絞り込みを行うことを指します。

今までどんなお客様に販売してきたのかという顧客情報(データベース)を整理して明確にし、その情報からニーズを正確に把握することで、入庫率アップや新規顧客の獲得といった結果につながります。

・提案件数
「提案件数」はお客様が商品に興味を持つきっかけづくりを行うことを指します。

お客様の情報(ライフ情報)を獲得・整理・管理すると、どのように提案していけば良いかがわかり、適切な提案回数で店頭での問診ができます。

入庫機会、対象台数、提案件数の3つでは「販売企画力」が問われます。

・入庫促進
「入庫促進」は、お客様が購入したいと思えるように動機づけを行うことを指します。

その方法はDM、電話、イベント開催、折込チラシ、ポスティング、インターネットなどさまざまです。

その中で適切な媒体を選び、どの商品をどのように売り出していくのか戦略を立て、実践することで入庫を促進することができます。

・売上単価
「売上単価」は商品の単価を上げることを指します。

商品単品の単価アップをしたり、セットメニュー開発など複数を組み合わせて単価を上げていくと、売上単価も上げることができます。

・顧客満足度(CS)
「顧客満足度(CS)」は実際にお客様と接する時間におもてなしをしていくということを指します。

社員育成(お客様管理、商品知識、接客スキル)に取り組み、一人ひとりが目の前のお客様に対して最大限のおもてなしを行うことで、顧客満足度の向上が見込めます。

入庫促進、売上単価、顧客満足度(CS)の3つは渉外、すなわちフロント力が問われる部分です。

以上6要素と基本行動例を考慮しながら、それぞれの要素における数字を上げていく必要があります。

実際に数字を上げていくためには、どのような対策をとればよいのでしょうか。

それぞれの要素について、さらに具体的に見ていきましょう。

入庫機会を創出するための対策

入庫機会対策では、需要を創り出すメニュー作りに取り組むことが重要です。

たとえば現在の自動車業界では、車の品質向上から乗換サイクルが長くなり、過走行車両が多くなっています。

また、省エネ車両が増えていることから環境への関心が高まっていると考えられます。

こうした傾向から、需要を作り出すメニューを考えていくことができるのです。

メニュー例として、過走行車両のユーザーに対しては、10年超えあるいは10万キロ超えを想定した点検基準を従来の点検基準に加えて、新たな車検メニューとしてアピールすることができます。

また、省エネ車両に対応した整備メニューを作ると、省エネ車両ユーザーのニーズに合わせたサービスが展開できるのです。

このようにお客様が今何に悩んでいるのか、どんな問題意識を持っているのか を情報としてキャッチし、それらを材料にメニュー作りを行うことが入庫機会の創出につながります。

決して「安いよ」「売れてるよ」と売り出すのではなく、お客様のニーズとその商品のメリットをベースに考えていきましょう。

たとえば、低燃費車には低燃費用のバッテリーがなぜおすすめなのかを、商品知識力で裏付けながら、お客様にお伝えしていくことが大切です。

対象台数への対策

対象台数の対策では、自社が抱えるお客様を明確化し、入庫率のアップや新規顧客の獲得に取り組むことが大切です。

まず、自社が管理するお客様の数(車の数)を確定させて対象台数の脱落を減らすことから始めましょう。

たとえば、商圏外に移動したお客様の情報や廃車になった車の情報が残ってしまっていないか、コンピュータ内のデータが古いものになっていないかを確認します。

こうした管理顧客のデータは定期的に棚卸しをして、常にフレッシュな状態にすることが大切です。

その上で車検回帰率などを分析し、お客様の減少の要因を明確にしていくことで、車検や保険の契約の脱落を減らし顧客の数を維持することができます。

また、新規顧客もしっかりと狙っていき台数を増やすことも重要です。

新規顧客については、どういったお客様に売り出すのかというターゲットを明確にすることから始めましょう。

たとえば、年齢層や所得階層、ライフスタイルなどでターゲットを絞り込んでいきます。そうすると、客層の市場特性をつかむことができ、効果的な販促活動が可能となります。

提案件数への対策

提案件数への対策では、顧客管理情報を活かして、そのお客様にあった提案をしていくことが重要です。

まずは、顧客情報から売上に結びつけるヒントを見つけていきましょう。

たとえば、年齢・性別・所得などの顧客属性や家族の状況、車の情報などからどのようなサービスが必要かを判断できます。

その上でお客様に合わせた顧客別売上計画を立てます。

メンテナンスや乗換、増車、保険、各種手続きなどがいつ必要になるのかを分析することで、どのタイミングでの販促が効果的かがわかります。

次に、その顧客別売上計画をお客様のカーライフプランとしてまとめていきましょう。

ひとつの例としては、今後のメンテナンスなどの情報をカレンダーに記載してお客様に差し上げるという方法があります。

このようなカレンダーを年末に渡すと、情報がわかりやすくお客様への販促にもつながります。

その上でお店にいらした時にそのプランに基づいた声掛けをしていくと、売上の実現に結びつけることができるのです。

以下で顧客管理と提案について、もう少し掘り下げてみましょう。

■顧客管理の目的
顧客管理の定義は「顧客管理の情報を駆使して、顧客の価値を高める一連の活動」です。

この言葉の意味を詳しく説明すると、まず「情報を駆使する」とは取引履歴、顧客属性、家族属性などの豊富な顧客情報を使って、提案活動に結びつけていくということです。

「顧客の価値を高める」とは、ロイヤリティの向上、顧客単価アップ、新規紹介率のアップなど顧客のファン化を行うということです。顧客管理の目的はここにあります。

「一連の活動」とは維持活動、販促活動、管理活動などを指し、これらの活動で顧客とふれあい、顧客の価値を高めていくことができるのです。

こうした顧客管理は法定整備の期日管理だけではない、安全・安心のためのトータル管理を行うことで実現します。

また、お客様目線で顧客管理を定義すると「資産管理」となります。

お客様自身の資産(=車)の保全、メンテナンス、運用などがお客様にとって最大のニーズであり、そのために自動車整備業は保安の確保や運行管理、売却・代替のお手伝いをするパートナーだと言えます。

そして顧客管理に基づいた提案活動は、先ほどご紹介した「顧客別売上計画」によって実現します。

顧客別売上計画を作るためには、顧客の属性と保有車両情報の整理から始めましょう。

まず、顧客の属性には、お客様名、年齢、家族、趣味などが挙げられます。

一方で車の属性には車名、初度登録、走行距離、内外装程度、事故歴、前回車検、前回点検、オイル交換、タイヤ購入などの情報が含まれます。

これらの情報を表にまとめてお客様別に管理し、お客様個人にあった提案活動に結びつけることが重要です。

■提案の本当の意味
提案の定義は、「お客様の困りごとを解決し、状況を改善するための行為」です。

お客様の困りごとは社員による「問診(=カウンセリング)」で見つけることができます。

効果的な問診をすることができるようになると、双方向で信頼関係を構築し、気がつかない不具合を発見できるようになります。

その結果、お客様の悩みを和らげ、心のケアまでできるようになり、親近感をアップさせられるのです。

お客様が「作業指示者」となるだけでは客単価は上がりません。単価アップのためにも問診は必ず行いましょう。

問診結果と過去のお客様情報から、お客様がまだ気がついていないニーズを引き出し、最良のサービスを提案することがフロントの役割であり、本当の意味での「提案」になるのです。

顧客満足度(CS)への対策

CSとはCustomer Satisfactionの略で顧客満足度のことです。

顧客満足度(CS)への対策として、まずはお客様満足度がどれほど業績貢献につながるかの関係性の理解が必要です。

整備活動は、そうした観点から以下3つのパターンに分けることができます。

・「お客様満足度に寄与するが、業績への影響がほとんどない内容」
・「お客様満足度を高めながら業績にも寄与する内容」
・「さらにお客様満足度が高く、業績にも貢献する内容」

まず1つ目は「お客様満足度に寄与するが、業績への影響がほとんどない内容」です。

たとえば、無料納引きや無料代車提供などがこれに当たります。こちらは満足度はあるものの、コストがかかるうえ、業績にも寄与しません。

また、好感の接客対応も該当しますが、これらはベースとして出来て当たり前のサービスと言えます。

2つ目は「お客様満足度を高めながら業績にも寄与する内容」です。

たとえば、事前見積もり提出や問診の実施、プロの整備提案などがあります。
これらはお客様をサポートしながら、売上につながるサービスとなります。

最後の3つ目は「さらにお客様満足度が高く、業績にも貢献する内容」です。

これらには納車時間の厳守、作業時間の短縮が挙げられます。特に作業時間の短縮は最もお客様満足度、そして業績の貢献度が高い要素になります。

最高の整備品質がお客様にとっての「満足」につながり、利用し続けたいと思ってもらえる要素なのです。

そのためには、工程管理を徹底し、整備力をアップさせることが必要になります。

■顧客満足度と整備品質の関係性
サービスに対してお客様は、二度評価すると言われています。

それは買う時と、買って(利用して)からです。

買う時は買うかどうかの評価であり、買ってからはこれからも利用していくか、周りに勧めるかといった行動に影響を与えます。

リピート率を高めていくためには「作業時間の短縮」や「納車時間の厳守」を徹底していくことが大切です。整備業においてお客様満足度を左右するのは、整備品質そのものです。

■顧客満足度を下げないお客様との距離感とは
一方で、不満を感じたお客様の64%が不満を伝えずに他店に行くことがわかっています。

不満を感じる要素として、接客時に笑顔がない、対応が雑・不誠実、あいさつがないということが挙げられます。

こういった冷たく気のない接客態度を受けてお客様は「歓迎されていない、軽く見られている、無視された」と不満を感じ、マイナスな評価をする傾向があります。

一度接客態度に不満を持たれてしまうと、品質そのものもマイナス評価になっていってしまうのでしっかりとした接客対応が重要です。

店員の対応が冷たくなってしまう原因として、お客様の顔・人柄・履歴がわからないということが挙げられます。

その結果、近寄れない、深入りしない、依頼された内容しか対応しない接客となってしまうのです。

また、お客様に関心がない、興味がないと受け身で事務的な行動をしてしまいます。

お客様に不満を持たれないためには、まずお客様を知ることが大切です。お客様を名前で呼べば、お客様に近づけます。

趣味や来店理由を知れば、親しみを持ちながら能動的な接客ができます。

さらに、お客様と「共通項」を持つことで、フレンドリーなサービスが可能となります。

お客様満足度に関して株式会社ティオでは、次の五訓を掲げています。

1.顧客満足度(CS)は明日の売上を左右する
2.顧客満足度(CS)はまず不満を作らないことだ
3.顧客満足度(CS)は顧客目線の改善活動だ
4.顧客満足度(CS)は理念化してこそ本物になる
5.顧客満足度(CS)は活動を継続させないと意味がない

このように、自社で顧客満足度に対する理念を明文化すると、一丸となって対策をすることができます。

まとめ

今回は整備売上のアップを図る6つの要素について紹介し、入庫機会、対象台数、提案件数、顧客満足度の具体的な内容も触れました。

整備の売上は単純な「数量×単価」ではなく、「(入庫機会×対象台数×提案件数×入庫促進×売上単価)×顧客満足度(CS)」と多面的に捉えることが重要です。

一つひとつの要素を、ご自身の会社のサービスと照らし合わせて、できるところから対策を行ってみましょう。