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フロントスタッフの役割【工程管理】の本当の効果と内容

投稿日:2021/09/02更新日:2021/09/09

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株式会社ティオの山本 覚氏による講義「フロント力が企業力に」の一部を紹介します。

参加した方々からは、
今行っている自分の業務と照らし合わせて聞くことができました
普段、できていないことが確認できました
といった声が上がっています。

今回は、前回紹介したフロントスタッフの役割のなかでも、特に注目したい役割である「工程管理」の内容とその効果について解説します。

生産を計画する事が重要

フロントスタッフは工程管理を通して全体を調整する役割を担っているため、おのずと整備工場の「生産計画」という重要な側面に関わっています。

その計画には次のように、入庫・納期・育成という3つのポイントがあります。

▼生産計画に必要なポイント
・入庫の計画:特定の時期に入庫が集中しないよう平準化
・納期の計画:納期の順守
・育成の計画:メカニックの技能向上

意識したいのは、生産性を高めるためにこれらの一つひとつの作業効率を上げていくことです。

そのためには、入庫や納期、メカニックの育成などの計画的なコントロールが必要であり、フロントスタッフ主導による「生産計画=工程管理」を立てることが重要です。

工程管理の良し悪しで生産性や売上が変わっていくため苦労も大きいですが、やりがいもあるのがフロント業務なのです。

工程管理とは

工程管理には、「作業割り当て」「作業指示」「作業調整」の3つの業務があります。

・作業割り当て

まず作業の割り当てから始まります。その際には、メカニックごとの得手、不得手を見極める必要があります。

それぞれが持つ能力を把握し、誰に何の作業を割り当てれば効率良く進んでいくのかを考えコントロールするのは、スタッフや作業全体を把握しているフロントスタッフの役目です。

一方で、その作業に不慣れな若手メカニックに経験を積ませるための教育的作業というのも存在します。

それらのバランスをうまくとりながら、作業を割り当てていきます。

・作業指示

次に、割り当てた作業の指示を出していきます。

詳細が記された作業指示書を渡しますが、ここで重要なのは適切な作業時間を指示し、それを守ってもらうことです。

スタッフの稼働率を上げていくためには生産性を上げる必要があり、そのためにはどの作業にどのくらいの時間をかけるのかを調整しなければなりません。

・作業調整

作業をしていく中で、急ぎの飛び込み作業が発生することは多々あります。

この、作業状況の変化に合わせた調整はフロントスタッフの腕の見せ所です。

大切なのは、割り込み作業を優先するのではなく、現在着手している作業を優先することであり、納期を見極めながら調整・采配していくことこそ、フロントスタッフの妙義といえます。

つまり、工程管理は生産能力を最大化し、納期を順守するために行うフロント最重要業務といえます。

工程管理の効果

工程管理を行うことで得られる効果には下記が挙げられます。

工程管理の効果
・適切な作業計画が立てられる
・コストダウンに貢献できる
・臨機応変に作業体制が組める
・意思の疎通が円滑になる
・売上対策に迅速に対応できる

そして整備作業の工程管理を効率的に行うためには、下記のような一定のルールが必要です。

工程管理ルール
・フロントスタッフだけが「工程カード」を動かす
・現場の動きと工程カードの動きが常に一緒である
・指示に変更が出たらフロントスタッフにすぐに連絡する

「工程カード」とは作業内容や進捗状況を識別できるカードのことで、フロントスタッフが工程管理ボードに張り付けて、現場の状況を見える化して把握するためのものです。

そのため、この工程カードをフロントスタッフ以外の人が動かすと、フロントスタッフは混乱してしまいます。

また、現場の動きが常に工程カードに正確に反映されなければ、作業スケジュールに狂いが生じたりします。

こうしたストレスを解消するためにも、現場の状況をフロントに再現することは重要です。

工程管理はミーティングで

工程管理を行っていくうえで、各作業はミーティングで指示します。

1日のうちに数回のミーティングを適切に行うことで効率化が図れます。

1.作業の段取りミーティング
タイミング:作業の前日、または当日の朝礼前まで
参加者:フロントスタッフ+現場責任者+営業部
内容:最適な作業計画を立てる

2.作業指示ミーティング
タイミング:作業当日の朝礼後すぐ
参加者:フロントスタッフ+現場作業者
内容:作業内容と時間の指示

3.作業調整+追加指示ミーティング
タイミング:午後一番
参加者:フロントスタッフ+現場作業者
内容:作業内容の変更の調整

4.作業調整+残業指示ミーティング
タイミング:午後3:30前後
参加者:フロントスタッフ+現場作業者
内容:作業内容の変更の調整

5.翌日の予定確認ミーティング
タイミング:終礼時
参加者:フロントスタッフ+現場作業者
内容:翌日の勤怠確認と概略伝達

ミーティングの事前準備も大切ですが、重要なポイントは「規則正しく」「キビキビと」「手短に行う」ことです。

もちろんミーティングは的確に、細かく、分かりやすく、厳格に行いましょう。

工程管理のための業務の流れ

工程管理は、入庫予約の受付から始まっています。

このとき、「予約管理ボード」「工程管理ボード」の2大ツールを活用して予約を管理します。

入庫予約受付

1日あたりの処理能力を設定し、作業量の平準化をする「予約管理ボード」にて管理します。通常30日を一区切りとして管理をしていきます。

ボード上では、メカニック数に応じて予約台数を決めたり、代車の予約もボードで管理したりする手法もあります。

朝礼前までに行う業務

朝礼前までに行う業務として、昨日から引き続きやっていかなければならない作業である「仕掛作業」と、入庫予約から、当日中に必要な作業である「本日作業」を合わせた作業計画を立てていきます。

作業計画は、「誰に、何を」「いつまでに」「どこの場所を使って」を考慮し、「工程管理ボード」を使って管理します。

朝礼後に行う業務

朝礼後に行う業務としては下記が挙げられます。

  1. 作業指示
  2. 部品発注・検品
  3. 飛び込み作業の対応
  4. 外注・損保調整
  5. トラブル対応
  6. お客様連絡
  7. 調整指示

複数日数が必要な作業がある場合は、その日どの部分まで終わらせるかを現場に支持する必要があります。

作業指示が及ぼす影響の範囲

工程管理において重要となる作業指示ですが、この指示の方法や内容によって納期や仕上がりといった「出来栄え=品質」と、稼働率や作業効率といった「生産性=コスト」が大きく変わってきます。

結果的に、整備売上とお客様満足度に影響を与えるため、作業指示によって品質が決定されると言えます。

作業指示と作業指示書とは

作業指示には、お客様が希望する整備品質を作り出すために、実施する整備作業と整備時間をサービススタッフに業務命令し、最高の技能を発揮させる目的があります。

そのためには、「何を」「どのように」「いつまでに」といった下記の3つの要素が入っていなければならず、作業項目しか書かれていない作業指示書は良い指示書とはいえません。

▼作業指示書に必要な要素
1.実施する作業内容が明記されている
2.作業内容が手順に沿って書かれている
3.作業完了時間が明確になっている

▼悪い指示書(例)
作業項目:
1.バッテリー交換および充電系統の点検
2.バッテリー

▼良い指示書(例)
作業項目:充電系統の点検およびバッテリー交換作業
1.バッテリー負荷テスト
2.バッテリー交換&ターミナル清掃
3.オルタネーター充電量点検
4.ベルト類点検・調整
5.始動系統各部点検
6.各電装品リークテスト
7.エンジンアイドリング調整
8.バッテリー交換およびバッテリー液量点検
9.バッテリートリートメント加工

上記の例はバッテリー整備に関する指示書です。

「悪い指示書」の例ではバッテリー整備に関する大まかな内容しか書かれておらず、整備に必要な一つひとつの詳細な作業内容が指示されていません。

一方、「良い指示書」ではどのような作業を行うかが細かく記載されているため作業漏れ防止となります。

また、メカニックに作業した内容を手書きで記載させている場合、メカニックが忙しさで記載をし忘れてしまうと請求漏れにつながります。

それを防ぐためにも、フロント側が作業内容を把握して指示することが重要です。

お客様にとっても、どのような作業が行われたかがわかるため、請求金額に対する納得度も仕上がりの満足度も高まるのです。

作業指示は4W1H1Tで行う(作業指示の出し方)

良い作業指示書を作るには、4W1H1Tを基本とします。

・Why(なぜ):車両状態を伝える
「いつ」「どこで」「何が」「どうなったか」を伝え、同時に過去の整備履歴を渡します。

・What(何を):作業目的を伝える
何の整備を行うかを伝えます。

・How(どのように):実施作業を命令する
整備する作業項目と作業手順を「書面」で命令します。納品書を作る気持ちで作成しましょう。

・Where(どこで):実施場所を命令する
どこの場所で行うかを伝える。場所によっては、使うツール、テスターなども指示する

・Time(標準は):標準作業時間を示す
標準作業時間として日整連の標準時間を使うか、自社独自のものを使うかを示します。

・When(何時までに):作業時間を命令する
当日の時間的余裕などは関係なく、担当する現場作業者の技能レベルに見合った作業時間とします。

そして、フロントスタッフの意識として作業指示はお願いではなく、業務命令として出すべきです。

そのほかにも、下記の点を踏まえて指示を出します。

作業指示の出し方
・業務命令として出す
・作業目的・内容を伝える
・終了予定時間を伝える
・お客様特性を教える
・予定外の対応を伝える
・最後に質問を受け付ける

技能に合わせた作業時間が指示時間

作業指示書の中で重要なのは、終了予定時間を伝えることです。

工程管理の目的は生産性の向上と納期管理であり、そのためにはフロントスタッフが作業時間をコントロールすることが不可欠です。

作業の終了予定時間を指定するためには、その作業に通常どのくらいの時間が必要なのかという「標準作業時間」を把握しなければなりません。

標準作業時間の定義は下記のとおりです。

標準作業時間の定義

認証基準の標準機械工具を使って、経験5年程度の3級整備資格の技能者が平均的な作業努力で行う。

標準作業時間は作業効率を算出していくうえでも必要ですので、すべての作業において標準作業時間を割り出しておきましょう。

標準作業時間が割り出されたらそれをもとに、技能経験が短い者、技能経験が長い者向けの作業時間を設定し、各メカニックに見合った時間指示を指示書に記載します。

作業時間算出の目安は下記の通りです。

▼技量に合わせた作業時間算出の目安
・技能経験が短い者には標準作業時間の1.2倍の時間指示を出す
・技能経験が長い者には標準作業時間の0.8倍の時間指示を出す

まとめ

フロントスタッフにとって最大の役割であり業務である「工程管理」ですが、ここまで工程管理の手法や業務フロー、作業指示の適切な出し方について解説してきました。

ここをしっかりとコントロールすることで、作業効率をアップさせ、生産性の向上が可能です。

さらに、的確な作業指示書はお客様満足度の向上にも貢献します。

つまり、工程管理の効果と内容を見直すことは、売上向上へとつながるのです。

記事協力:
株式会社ティオ 代表取締役 山本 覚 

略歴
新車ディーラー(マツダオート横浜)で営業職を経験した後、カーアフター業界専門コンサルタント会社に営業職として入社し、仙台、大阪、福岡の営業所長を経て指導部部長を8年務める。1999年(平成11年)に独立し、カーライフビジネス業界専門経営コンサルタントとして40年近くにわたり、カーアフター業界専門に実務改善指導・部門再構築指導、人材開発指導・マニュアル開発・諸規定策定等担当。また、カーメーカーおよび業界団体、関連企業等の依頼による職能別・階層別・テーマ別の各種セミナー・講演会等を担当。
詳しくはhttp://www.tio21.co.jp/administration/profile.pdf