マーケティング

自動車整備工場専用のメンテナンスパック商品化ポイントを解説

投稿日:2021/08/19更新日:2021/08/19

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今回も、カーライフ事業専門の経営コンサルタントとして長年活躍する、株式会社ティオの山本 覚氏による講義をご紹介します。

参加した経営者の方々は、
すぐに取り組める内容でしたので、会社全体で進めていこうと思います
なぜメンテナンスパックが必要なのかが、よくわかりました
と、講義を評価する声が上がりました。

定期点検や消耗品の交換など、車購入後のアフターサービスがセットになっているメンテナンスパックですが、メンテナンスパックの販売はそれ自体の売上以上に、さまざまな効果が期待できます。

前回の記事では、メンテナンスパックの必要性について解説しました。

今回は、個客密着のためのメンテナンスパックの商品化や販売における具体的なポイントを紹介します。

車販型メンテナンスパックは整備工場にはミスマッチ

メンテナンスパックと聞くと、新車ディーラーが販売する車販型のメンテナンスパックのイメージが強いのではないでしょうか。

しかし、実は車販型のメンテナンスパックは整備工場のサービスとしてはあまり向いていません。その理由は5つあります。

1.売上が車販台数に依存してしまう
車販時にセットで販売していくので、売上が車販台数に依存してしまうという点です。

車の販売台数が増えなければメンテナンスパックの販売数も増えていかない上、ディーラーと比べると販売する車の数が多くありません。
そのため、メンテナンスパックの売上も伸び悩んでしまいます。

2.事務員やサービスマンがメンテナンスパックを売れない
売るタイミングが限られてしまうので、事務員やサービスマンがメンテナンスパックを売れないという点です。

車販型のメンテナンスパックは新車購入時にセットとして買うお客様が7割と言われているので、その分普段の営業やサービスで売れる可能性が低くなってしまいます。

3.拡販キャンペーンができない
メンテナンスパックの拡販キャンペーンが車販キャンペーンになってしまうという点が挙げられます。

メンテナンスパックだけの拡販キャンペーンにできないので、車の販売がメインではない整備工場には不向きです。

4.契約件数アップに期間がかかる
車販型だと契約件数アップに長期間かかってしまうという点です。

車販のタイミングや期間に依存するので、普段の営業やサービスで売る機会がなく契約件数アップのスピードも遅くなってしまいます。

5.継続率が低くなってしまう
車販の値引き商品になってしまい継続率に影響するという点です。

車販型ではお客様自身が入りたいと決断したわけではなく、車販のオマケとして購入する場合がほとんどです。

そうするとお客様にとって入会したという意識が薄く、更新の意欲が湧かないという懸念点があります。

以上の5つの点を踏まえると、車の販売ではなく、整備などのサービスが中心の整備工場では、車販型のメンテナンスパックは不向きと言えます。

メンテナンスパック5つの目的とお客様と自動車整備工場のメリット

メンテナンスパックを導入することで期待できる効果は、下記の5つです。

  1. 顧客の囲い込み
  2. 付加価値の向上
  3. 定期点検の普及拡大
  4. 販売コストの低減
  5. 入庫のコントロール

なかでも販売コストの低減と入庫のコントロールは、特に整備工場にとって大きなメリットと言えます。

たとえば、オイル交換や定期点検の案内など、パックの内容一つひとつを個別で広告を出し、販促していく必要性がありますが、メンテナンスパックではその必要はありません。

また整備工場側で入庫をコントロールすることができるので、工場の混み具合によって自由にサービスの調節が可能になります。

メンテナンスパックを導入することで、お客様にもメリットがあります。

まずは、メンテナンスを網羅的にできることで、故障の発生割合が低くなり、お客様が車を快適に利用できるという点が挙げられます。

また、まとめ販売になるので通常の単品価格より安くなり、経済的にも負担が軽くなります。

その上、お客様自身がオイル交換や、点検の時期に気を張り続ける必要性がなくなり、車の維持管理が楽になるという点も挙げられるのです。

このように、メンテナンスパックは販売する側にも、お客様側にもメリットがあることがわかります。

整備工場型メンテナンスパックの基本的な考え方

メンテナンスパックの効果の次に、メンテナンスパックの中身についてもくわしく見ていきます。

・整備メニューの組み合わせ
整備メニューの組み合わせは、ハイブリット車だけ、普通車だけなどの整備メニューにするのではなく、どの車にも共通するメンテナンス内容を組み込むことが重要です。

また、すべてのメニューをひとまとめにして一括購入にするのではなく、「基本セット+選択メンテナンス」という形にしましょう。

選択できるメンテナンスがあると車の使用状況や、お客様のニーズにあったメンテナンスパックにすることができます。

・特典制度
メンテナンスパックにつける特典も考えていきましょう。まずは路上故障の対応を入れるとお客様にとって親切です。

また、損害保険会社など、他会社のサービスを組み込むのも一つの手です。そして、継続率を高めるためには継続契約特典を入れることが不可欠です。

特典をつけることでお客様にとって継続利用をするメリットが生まれます。

・年間に支払う金額
お客様が年間に支払う金額についても検討していく必要があります。

たとえば、多くのメニューをパックでひとまとめにしていくと内容は充実していきますが、お客様にとって手の届きやすい値段から離れてしまい、購入を妨げてしまう可能性があるのです。

したがって、中身を作ってから金額を設定するのではなく、あらかじめ月額の料金を設定してから中身を作っていくという方が、結果的にお客様の購買意欲を高められる商品になります。

月額の支払額もお客様が払える金額かどうか、という視点を持って設定をしてみましょう。

月間で1,500円前後、年間2万円以内が限度で、できれば年間15,000円を切る内容だと良いでしょう。

また、長期契約の割引をつけることでメンテナンスパックを継続利用してもらうことができます。

メンテナンスパックで考えるべき基本項目

メンテナンスパックを作るにあたって考えるべき基本的な項目を見ていきましょう。

・契約期間
契約期間は基本的に1年契約にしましょう。ディーラーでは3年契約が主流となっていますが、まずは1年の契約で作って様子をみることをおすすめします。

料金設定もお安くできますし、対象車は新車だけではないからです。

1年以上の契約がお客様の要望であれば、2年、3年、5年契約など、1年のパックを複数個売るという対応ができます。走行距離は無制限とするのがおすすめです。

・料金目安
【整備工場型メンテナンスパックの基本的な考え方】の項目でも挙げたように年間12,000~15,000円に収めましょう。

自社で管理できるのであれば、重量区分での車種別料金体系を設定するのも良いですが、車種の種類を増やすと管理が複雑になってしまいます。

そのため、料金体系はシンプルに「軽自動車」と「普通車」にすることをおすすめします。

・支払い回数
支払い回数は契約時に契約期間分を現金で一括払いするという形がベストです。

月払いはローン会社とのローンが組める場合に導入を検討してみましょう。

・車両乗換
契約途中にお客様が車を変えた場合は途中解約の手続きをするのではなく、残りメンテナンスを乗換後の車両に引き継ぐことが一般的です。

できるだけ解約に進ませない、会員数を減らさないための工夫が必要です。

・中途解約
中途解約は原則としてはできないとしましょう。ただし、やむを得ない理由の場合は中途解約ができるものとし、未実施分部品代を通常料金の20%引き計算で金額を返金するという仕組みにします。

・整備保証
まず整備保証として、整備した箇所については販売店の責任で保証するものとしましょう。

1年または1万kmの保証がついていれば良いでしょう。

・傷害保険
傷害保険を特典でつけることをおすすめします。「あんしん点検保険」を標準で付保すると良いでしょう。

・対象車種
対応の車種は基本的に乗用車(3・5ナンバー)のみ。あるいは貨物車(1・4ナンバー。ただし2t車以下)を含めるのが一般的です。

・納車引取
納車引取は整備工場側で行わず、お客様自身で行うことを条件としましょう。

工場が行う場合は有料と伝えることをおすすめします。

納車引取をしないという事で対面でお話ができるというメリットもありますので、無理にこちら側が納車引取を行う必要はありません。

メンテナンスパック内容の具体例紹介

さまざまなメンテナンスパックの一例を見ながら、メンテナンス内容のイメージをより具体化していきましょう。

ここでは、とある整備工場で提供したメンテナンスパックの実例を紹介します。

まず、メンテナンスパックのメニューは、全7品目とし基本セット6品目+選択ができる1品目という内訳になっています。

◇基本セット

  • エンジンオイル交換(2回)
  • オイルエレメント交換(1回)
  • フロントワイパーゴム交換(1回)
  • ブレーキフルード交換(1回)
  • 法定1年点検
  • 6ヶ月ごとの10ポイント点検

※この中にOBD診断を入れるのもおすすめ

◇選択ができる1品目(任意メンテナンス)

  • タイヤローテーション(1回)
  • エンジンオイル(1回)
  • 窒素ガス充填(都度)
  • 室内消臭・除菌(1回)
  • タイヤ履き替え(1回)
  • 機械洗車(2回)

任意のメンテナンスのアイデアとして上記の他にも、地域の特性を活かしたメニューを組みこむのも効果的です。

たとえば、地方では通勤に車を使う人が多いので、タイヤの履き替えの回数を増やしたり、基本メンテナンスに加えてエンジンオイルの交換を選択できるようにしておくと、よりニーズに沿ったメンテナンスパックになります。

会員特典の内容例

  • パック以外の整備に伴う標準技術料の5%オフ
  • ゴールド免許割引
  • シルバー(65歳以上)割引
  • 新車2年or走行3万km以内割引
  • カー用品の会員割引
  • てんけん安心見舞金(日整連)の付与
  • 誕生日プレゼント

会員特典もいくつか用意。まず、パック以外の整備に伴う標準技術料の5%オフなどが考えられます。

また、属性的な割引として、ゴールド免許やシルバー(65歳以上)のお客様の割引や、新車2年または走行3万km以内での割引なども考えられるでしょう。

カー用品についても店頭価格より会員割引を適用してお得感を出すことができます。

また、日整連が提供する「てんけん安心見舞金」制度を利用し、見舞金や修理の特典を用意することも良いでしょう。

ユーザーとの関係をより深めるため、誕生日プレゼントの特典も有効的に使うこともできます。

ちょっとした割引や、カー用品でもいいので、プレゼントを用意するとユーザーに親しみを感じてもらうことができます。

■契約期間とパック料金例
契約月や車齢、総走行距離などの条件はつけません。1年契約を基本とし、それ以上の長期契約は、お客様のニーズや取扱い店の任意で組むと良いでしょう。

たとえば、1年契約では1年パック料金、2年の契約では1年パックの料金×2年分から長期契約割引をした金額設定が考えられます。

長期契約の割引の設定は、2年契約で1年契約金額の10%オフ、3年以降は1年契約金額の20%オフとするのも良いでしょう。

近年、マイカーリースを商品として持つ整備工場も増えてきています。そういったマイカーリースのメンテナンス商品としても、メンテナンスパックは販売可能ですので、ぜひ導入を考えてみてください。

まとめ

今回はメンテナンスパックを商品化するにあたって、その効果や商品内容の基本的な項目、特典など、基本的な考え方を紹介しました。

現在、自社で販売しているメンテナンスパックと比べていかがでしたでしょうか。

商品はお客様のニーズや状況に合わせて改善していく事が販売数の増加に繋がります。

そのためにも、契約年数や金額などをあらかじめお手頃に設定することで利用者の数を増やし、お客様の声を集めて柔軟にメンテナンスパックの内容を変えていきましょう。

記事協力:
株式会社ティオ 代表取締役 山本 覚 

略歴
新車ディーラー(マツダオート横浜)で営業職を経験した後、カーアフター業界専門コンサルタント会社に営業職として入社し、仙台、大阪、福岡の営業所長を経て指導部部長を8年務める。1999年(平成11年)に独立し、カーライフビジネス業界専門経営コンサルタントとして40年近くにわたり、カーアフター業界専門に実務改善指導・部門再構築指導、人材開発指導・マニュアル開発・諸規定策定等担当。また、カーメーカーおよび業界団体、関連企業等の依頼による職能別・階層別・テーマ別の各種セミナー・講演会等を担当。
詳しくはhttp://www.tio21.co.jp/administration/profile.pdf