マーケティング

利益増に直結!フロント力の重要性

投稿日:2021/08/26更新日:2023/05/19

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今回は、株式会社ティオの山本 覚氏による講義の一部「フロント力が企業力に」というテーマの内容をご紹介します。

本講義を受けた参加者からは
整備工場においてのフロントスタッフの重要性を認識できました。
フロントスタッフの力量によって、業績が大きく変わるのだと改めて勉強になりました。
という声が上がっています。

フロント力を高めるために、まずはフロントの基本機能と役割についてご紹介していきます。

フロントについてくわしく理解できれば、企業力の向上につながっていくはずです。

フロント力と期待効果

まずは、フロント力と期待できる効果について見ていきましょう。
フロント力は大きく分けて3つあります。

1.工程管理
作業指示の徹底による納期管理が重要となります。

2.顧客対応力
問診からの整備提案や提案するための商品知識、車にまつわる知識を身につけることが大切です。

3.入庫促進力
たとえば、定期点検のお知らせなどお客様への最初の接点から、点検後のアフターサービスまで一貫してやりきる促進活動の仕組みができているかどうかが問われます。

上記3つが代表的なフロント力であり、それぞれのレベルが上がることで期待効果が得られます。具体的な効果については下記のとおりです。

1.生産性が上がる
現場生産力のパフォーマンスが高まり、メカニックにおける売上増加などが見込めます。

2.整備売上が高まる
需要量との関係もあるため一概には言えませんが、売上アップと同時にコストダウンの実現が期待できます。生産性が向上すれば業務の無駄を省くことができるため、あらゆる分野のコスト削減につながります。

3.顧客満足度が高まる
フロント力のレベルが高くなることで納期厳守と短時間整備が可能となり、顧客満足度の向上が図れます。また、顧客対応力が高まれば顧客からの信頼度も高まるため、結果として高い満足度につながります。

以上のことから、フロント力=整備工場の企業力といえます。フロント力が高まればメカニックの育成にも期待が持てるため、フロント改善は優先されるべき事項です。

顧客志向のフロントスタッフに変身しよう

では、これからのフロントスタッフはどうあるべきなのでしょうか。従来のフロントと最新のフロントを比べながら見ていきましょう。

従来のフロント最新のフロント
スタイル受動型能動型
機能受付窓口部門品質向上部門
顧客対応期日管理提案業務
現場対応現場追従現場コントロール
事後サービス同一対応個別対応

最新の顧客志向のフロントに求められる要素

・能動型のスタイル
これからのフロントでは、自ら仕事を創り出すことのできる「攻めのフロント」が求められます。

発生した仕事を受動的にこなしていくのではなく、フロントからお客様へ積極的にアプローチ(提案)していく姿勢が重要です。

・品質向上部門としての機能
今までのフロントは受付窓口としての役割が中心でしたが、これからは品質に対しての責任も重要となります。

そのため、「フロントが品質を創る」という品質向上部門としての機能が必要です。

・提案業務型の顧客対応
今までは定期点検や車検など、期日のある顧客対応を中心に管理していました。

しかし、これからは従来の顧客対応も含めて能動的に提案する「提案業務」を実践し、お客様との関係作りを行います。

たとえば、オイル交換やタイヤ交換などの個別(個客の使用状況を踏まえた)提案などが挙げられます。

最新のフロントではお客様への提案こそ最大の業務ともいえます。

・現場をコントロールする現場対応
現場対応についても、従来の現場追従型からフロントが現場をコントロールする組織運営への変更が必要です。

つまり、現場に全て任せきりにするのではなく、「フロントが生産性を決める」という要素がキーポイントとなります。

・個別対応の事後サービス
最新のフロントが担う事後サービスは「メリハリをつけたお客様対応」のように、お客様ごとに対応を分けるようなサービスが求められます。

全てのお客様にマニュアル的に同じ対応をするのではなく、お客様の会社に対する利益貢献度に応じておもてなしをしていくことが必要です。

最新のフロントでは、個々のお客様に対してそれぞれ適切なアプローチを行う「個客シェア」がどれだけとれたかが、フロントの評価につながります。

また、フロントは整備だけでなく、用品、車販、買取、保険など、車にまつわる全ての内容について、お客様に合わせた提案ができることが求められます。

そして、それが個客シェアを高めていくことにもつながります。

フロントを定義する(フロントの使命)

フロントの重要性をお分かりいただけたところで、改めて「フロントの使命」について述べてみます。その使命は下記のように定義できます。

お客様が求める期待に応える品質を創り出すことによって、会社の利益に貢献するところである。

この定義をさらに細分化して見ていきましょう。

「期待に応える」とは

お客様は整備工場に対し、早く・確実に・リーズナブルにやってほしいという顕在的(意識している)な欲求があります。

一方で潜在的(心に秘めた)な欲求として、親切に・公平に・礼儀正しくしてほしいという思いがあります。

そのため、両方の欲求にアプローチする姿勢が重要です。

「品質を創り出す」とは

品質を創り出すとは、確かな仕事をメカニックに行わせるという「機能的品質」で応えることです。

また、お客様の状況を考えて丁寧な仕事をする「心理的品質」で応える必要もあります。

つまり、顕在的な欲求に対しては「機能的品質」で応え、潜在的な欲求については「心理的品質」で応えていくことになります。

「利益に貢献する」とは

現場の動きはフロントでコントロールするため、フロントの采配次第で利益が決まります。

つまり、ムダ・ムラ・ムリが発生しないように作業を指示しその指示を管理調整して、最高の品質を目指すことがフロントに課せられた使命です。

このように品質の高い仕事をすれば「顧客満足度」も高まり、会社に下記3つのようなメリットをもたらします。

  1. 顧客満足度が高まれば売上は上がる
  2. 顧客満足度が高まれば取引が継続する
  3. 顧客満足度が高まれば入庫率が上がる

3つのメリットを得られるよう、高い意識を持ってフロント担当として従事していくことが必要です。

フロントの4つの基本業務と役割

続いて、フロントの基本業務と役割について解説します。フロントには4つの対外的・対内的な基本業務があります。

フロントの対外的業務:お客様を保持するための業務推進

1.販売管理
お客様をランクアップさせるための提案活動です。たとえば、入庫促進活動や販売促進企画の立案などが考えられます。

2.個客管理
「顧客」ではなく、個々のお客様を指す「個客」管理です。お客様をファン化させる一連のサービス活動のことで、個客別に売上計画を立てて管理します。

フロントの対内的業務:整備生産性を高めるための業務推進

3.工程管理
工程管理では、与えられた条件で最大の生産性を上げることを目指します。そのために、作業を計画しその計画の進捗を管理して納期を遵守します。

4.事務管理
ここでは、的確な値付けと業績を評価して対策を立てます。適正な値付けとプロセスを振り返れば次の業務に活かせます。

これらの基本業務を円滑に進めていくために、フロントには次の3つの役割が必要となります。

フロントの3つの役割

  • コントローラー(調整役):工程管理を通して全体を調整する
  • プレゼンター(提案役):提案活動に取り組む
  • アドバイザー(支援役):お客様と現場双方に対して支援する

フロント担当者は上記3つの役割を担うことになります。

フロントスタッフの心構え

最後に、フロントスタッフの心構えを解説します。

まずは、自分の存在そのものが「商品=会社の代表」であるという意識を持った立ち振る舞いが必要です。

なぜなら、お客様に与える印象で整備や会社の良し悪しが決まるからです。

つまり、顧客満足度と売上が印象によって決まってしまうのです。整備という商品は目に見えません。ゆえに「印象」が大切なのです。

それだけ重要な役割であることを常に意識しましょう。したがって、次のような心構えが大切です。

  1. どのような場合においてもお客様を優先する
  2. お客様の立場になって判断・行動する
  3. 迅速丁寧を旨とし品質向上に努める

これらにもとづいた行動はお客様が感じる印象となり、フロントの評価につながっていきます。

まとめ

ここまで、フロントの基本機能と役割についてご紹介しました。

普段の業務と照らし合わせてみて、今回解説した基本機能と役割についてどれほどカバーできているでしょうか。今一度、確認してみてください。

実践できそうなところから改善していくことで、少しずつ事業への貢献につながっていきます。

業績アップには改善活動が大切であるため、身近な業務から見直していきましょう。

記事協力:
株式会社ティオ 代表取締役 山本 覚 

略歴
新車ディーラー(マツダオート横浜)で営業職を経験した後、カーアフター業界専門コンサルタント会社に営業職として入社し、仙台、大阪、福岡の営業所長を経て指導部部長を8年務める。1999年(平成11年)に独立し、カーライフビジネス業界専門経営コンサルタントとして40年近くにわたり、カーアフター業界専門に実務改善指導・部門再構築指導、人材開発指導・マニュアル開発・諸規定策定等担当。また、カーメーカーおよび業界団体、関連企業等の依頼による職能別・階層別・テーマ別の各種セミナー・講演会等を担当。
詳しくはhttp://www.tio21.co.jp/administration/profile.pdf