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車販の真価! 総合付加価値の創出には車販×アフターサービスが必須

投稿日:2021/09/09更新日:2021/09/10

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今回も、カーライフ事業専門の経営コンサルタントとして長年活躍する、株式会社ティオの山本 覚氏による講義をご紹介します。

整備工場が車販を行うことは、単なる車の売上の利益以上の価値があることをご存知ですか?

今回は車販の本当の狙いと、車販から生み出される自動車整備工場ならではの総合付加価値経営について解説します。

講義に参加した経営者の方々からは、
何事にも目的意識を持つことが重要と再確認させていただきました
当社のような小規模車販店でも十分参考になる内容でした
と、講義を評価する声が上がりました。

皆さんの事業にも役立てることのできるヒントがあるかと思います。

車販3つの狙い

そもそもなぜ、整備工場で車販を行う必要性があるのでしょうか。
実は、車販を行う上でのメリットは売上の利益だけではありません。

車販の真の狙いは以下の3つです。

  1. 失客の防止:客を減らさない
  2. 顧客関係強化:本当の自社客を創る
  3. 顧客の新陳代謝:店舗の活性化を図る

車販は、整備だけではない関係性をお客様と築き上げ、お客様を減らさない・惹きつける効果に繋がるだけでなく、お客様の流れが良くなることで店舗の活性化を期待することができます。

そしてこの3つの狙いはストックビジネスを強化し、総合付加価値経営へと経営の形を進化させていくことにつながります。

したがって、車販は増収増益の実現だけでなく、最終的には持続可能な経営の追求のために取り組んでいくべきものであるといえます。

ここからは、一つひとつの狙いについてもう少しくわしく見ていきます。

車販ロスト客をなくさないと地域密着経営は絵に描いた餅

まずは車販の狙いの1つ目「失客の防止」についてです。なぜ失客の防止が重要なのか、シミュレーションをして考えていきます。

仮に自社の管理台数が500台あるとしましょう。乗換サイクルを10年とすると年間の乗換見込みは50台となります。

そしてこの50台がロスト台数(失ってしまう顧客台数)です。

また、残りの450台は車検対象となっていきますが、車検は2年に一度であるため、1年間の車検対象台数はその半分(管理台数が全て乗用車の場合)の225台と考えられるでしょう。

そして、車検入庫率が70%とすると年間の未入庫台数が67台となり、それがロスト台数となります。

上記の2つのロスト台数を合わせると、

車販ロスト客50台+車検ロスト客67台=合計117台

となり、管理台数の約23%にものぼります。そのうちの4割強、50台が車販を行わないことで生まれてしまいます。

ここに、車販の狙いがあり、車販はまずこの50台を防ぐことから始まるのです。

もちろん車検の入庫率を上げることも重要な課題ですが、同時に車販を行うことで車検ロスト客を減らすことができます。

効果的にロスト客を減らすために、車販の優先ターゲットを管理顧客にして、自社乗換率目標を設定した上で対策していきましょう。

車両購入店への車検依頼意向は根強い

次は「顧客関係強化」です。なぜ車を販売することで顧客との関係が強まるのでしょうか。

ここでは特に新車販売に着目して考えていきます。

上記のデータを見てみると、新車を購入しているお客様は中古車を選んだ人に比べて、購入した先で車検を依頼する傾向が高いことがわかります。

これは、中古車ユーザーが購入先への帰属意識が薄いまま車を購入しているのに対して、新車ユーザーは車だけでなく、お店まで含めて購入している意識があるのではないかと考えられます。

中古車と比べると新車の利益は薄いですが、下記のような販売以降のメリットが新車販売にはあります。

  • 新車購入客の方が帰属意識が高い
  • 下取り車の再販利益が期待できる
  • 保険乗り換えなどの付加価値が期待できる
  • 次回乗換の優先商談が期待できる

車販(特に新車販売)を行うことで、お客様の帰属意識を高め、その後の営業へスムーズに繋げることができるのです。

したがって、車販を実際に行う際は、新車7割、中古車3割という比率で取り組まれることをおすすめします。

整備工場の顧客を若返らせるには車販が一番

最後は「顧客の新陳代謝」です。なぜ、車の販売を行うとお客様の若返りを期待することができるのでしょうか。

加えて、なぜ若返りが必要なのかという点も考えていきます。

上記のグラフを見てみると、それぞれ主要となるお客様の年齢層が異なるということがわかります。

  • 新車ディーラー:20、30歳代
  • 中古車販売店:40歳代前後
  • 整備工場:60歳代

整備工場のお客様の年齢が高い理由として、下記3つの理由が考えられます。

  • 管理顧客の新陳代謝がない
  • 社長と社員の平均年齢が高い
  • 車販客の多くが管理顧客

整備工場のお客様の多くは先代社長からお付き合いのある管理顧客が多い上、ディーラーではメカニックの平均年齢が35.7歳なのに対して、整備工場は50.2歳と社内の年齢自体も高くなっているのです。

上記の理由から、整備工場のお客様はどうしても年齢層が高く代謝が悪くなってしまいがちです。

そこで、管理顧客のみならず新規顧客にも積極的に車販することで、管理顧客の新陳代謝を図ることが重要となります。

そうすることで、管理顧客の高年齢化の問題点である、

  • 購買力を低下させる
  • 客数の減少
  • 取引期間を短くする
  • お店を地味にする

などのマイナス点をカバーすることができるのです。

ここまで、車販の3つの狙いを具体的に紹介してきました。

ここからは車販がもたらす、ストックビジネスの強化と、総合付加価値経営の関係について考えを深めていきます。

ワンストップサービスが顧客価値を高める

車販の目的を考える上では、自社で行っている整備(=アフター事業)との関係性を考えることが重要です。

上の図を見てみると、まず車の販売において商談→成約→納車という過程を経て、アフター事業を行う管理が始まることが分かります。

そして、個客管理をしていく中で、お客様のカーライフを豊かにしていくためにさまざまなサポートを行うアフターサポートがあります。

これらのサポートを通じて顧客満足度(CS)が向上することで、また新たな車販機会が訪れるという良いサイクルが作られます。

一方で、顧客満足度(CS)が低いとお客様は他社に流れていってしまいます。

このように、車販とアフター事業は両輪の関係にあり、両方の事業を合わせて進めていくことで個客密着したストックビジネスの強化が叶います。

車販を行うことで、ワンストップでお客様のカーライフをサポートし、整備という価値だけではない総合価値を付加する経営へと繋がっていくのです。

それでは最後に、整備工場が車販を行う上でのコツを紹介いたします。

車販強化の根本はサービス力強化にあり

上記の表を見てみると、お客様満足度とリピート率の関係は「商品」よりも「サービス」の方が影響力を持っていることがわかります。

言い換えると、お客様は購入する車や商品に満足していなくても、アフターサービスで顧客満足度が高ければリピートしてくれる可能性が高くなるのです。

そしてこのアフターサービスの満足度を決めるのは、「技術力+管理力+接客力」です。

整備という本業が強い整備工場は車販においても高い成果を生み出すことができます。

したがって、「整備がうまくいかないから、他の事業に挑戦する」のではなく、まずは自社の整備の質、サービス力を上げることが一番重要です。

まとめ

今回は、車販の本当の狙いと、車販から生み出される自動車整備工場ならではの総合付加価値経営について紹介しました。

整備工場が車販を行うことで、

1.失客の防止
2.顧客関係強化
3.顧客の新陳代謝

をはかり、自社のストックビジネスの強化へと繋げることができます。

車販、アフターサービスの両輪を回すことで、お客様の満足度を上げ、総合的な価値を提供できる工場へと進化していきます。

車販の目的をしっかりと理解し、整備工場ならではの総合付加価値経営を行っていきましょう。

記事協力:
株式会社ティオ 代表取締役 山本 覚 

略歴
新車ディーラー(マツダオート横浜)で営業職を経験した後、カーアフター業界専門コンサルタント会社に営業職として入社し、仙台、大阪、福岡の営業所長を経て指導部部長を8年務める。1999年(平成11年)に独立し、カーライフビジネス業界専門経営コンサルタントとして40年近くにわたり、カーアフター業界専門に実務改善指導・部門再構築指導、人材開発指導・マニュアル開発・諸規定策定等担当。また、カーメーカーおよび業界団体、関連企業等の依頼による職能別・階層別・テーマ別の各種セミナー・講演会等を担当。
詳しくはhttp://www.tio21.co.jp/administration/profile.pdf