「交換したタイヤは、どうやって保管したらいいんだろう」と、悩む人も多いのではないでしょうか。タイヤを適切に保管するためには、収納場所と取り扱い方に留意することが大切です。
本記事では、タイヤの正しい保管方法についてわかりやすく解説します。また、適当なスペースを確保できない場合の対処法についてもあわせて紹介しますので、参考にしてください。
タイヤを保管するには準備が必要
「タイヤは外したらそのまましまえばいい」と思っていませんか?実は、収納する前の一手間で、劣化を遅らせることができるのです。
保管前に必要なポイントは、以下の3つです。
・タイヤを洗う
・空気を抜いておく
・ワックスはかけない
各項目について、解説していきます。
タイヤを洗う
保管前にタイヤを洗うのは、表面に付着しているさまざまな汚れを落とし、きれいな状態にしておくためです。
特に、融雪剤など化学物質を含む汚れがついたまま長期間放っておくと、タイヤが劣化しやすくなります。
タイヤに付着している汚れは、水を使って丁寧に洗い流しましょう。
洗剤を使用する必要はありません(ただし、ブレーキダストなどの頑固な汚れを落とす場合は洗剤が必要です)。
洗浄後、十分に乾燥させることも保管する前の大事な作業です。
空気を抜いておく
保管するタイヤは、事前に空気を抜いておくことが原則です。走行中のタイヤには、温まると膨張し冷えると収縮する、という負荷がかかっています。
これは気温の変化によっても起こるため、収納しているタイヤにも同じような負荷がかかると考えられています。
空気を抜いて収納するのは、このような気温の変化によるタイヤの負荷を軽減して劣化を防ぐためなのです。
空気を抜く程度については、指定空気圧の半分、数字にすると1~1.5kPa(キロパスカル)が目安です。
ワックスはかけない
保管するタイヤにワックスをかけることは避けましょう。なぜなら、ワックスには石油系溶剤や界面活性剤などの化学物質が含まれているからです。
これらの化学物質によって、タイヤに元来配合されている劣化防止剤が染み出しやすくなります。
ワックスは、見た目を良くするだけでなく紫外線をブロックしたり、ひび割れを防止したりする効果が期待されています。しかし、タイヤのことを考えると、水洗いしてから収納するのが一番です。
タイヤ保管時の注意点
タイヤの劣化を招く要因は、私たちの身近にあふれています。タイヤを保管する際は、これらの要因を避ける必要がありますが、特に以下の点に注意しましょう。
・直射日光を避ける
・雨水に触れさせない
・熱や油を避ける
タイヤ保管時の注意点について、それぞれ解説します。
直射日光を避ける
タイヤにとって、直射日光は大敵。なぜなら、直射日光に含まれている紫外線は、ゴムの性能を低下させるなど、タイヤの劣化を招く要因となるからです。
タイヤを直射日光の当たる場所に置いておくと、やがて表面にひび割れが生じる可能性があります。
そのため、タイヤを置く場所は日陰を選びましょう。ただし密封された場所に置いたままにすると湿気が生じ、これもタイヤを劣化させてしまいます。
この場合、ときどき換気をして空気を入れ替えることが大切です。
雨水に触れさせない
タイヤを収納する時は、雨水を避けるという点にも留意しましょう。雨水も紫外線と同じように、タイヤの寿命を早めてしまうからです。
たとえば、タイヤの内部に水が侵入すると、スチールコード(タイヤのベルトなどに使用されている素材の一種)が錆びてしまうおそれがあります。
タイヤにとって最適な保管場所は、「雨水に触れる心配のない場所」です。どこに収納するか検討する時は、この点を忘れないようにしましょう。
熱や油を避ける
タイヤを保管する場所には、油がついたり、熱を発生させたりするおそれのある物を一緒に置くことは避けましょう。
タイヤに使われているゴムは、油を吸収します。また、熱はゴムを変形させやすいというのが理由です。
タイヤを収納する前に、保管場所にバッテリーや潤滑油、エンジンオイルなど熱や油に関係する物がないかどうか確認しましょう。
もしあればほかの場所に移動させるか、できるだけタイヤに近づけないよう工夫する必要があります。
タイヤの保管場所
これまで説明したことを踏まえると、タイヤを劣化させる要因には
・紫外線
・雨水
・熱と油
があることがわかりました。
つまり、以下の条件を満たしている環境がタイヤの保管に適していると考えられます。
・直射日光が当たらない、風通しの良い場所
・雨水が当たらない場所
・熱や油に触れるリスクの少ない場所
以上の条件に加え、タイヤを置くのに十分なスペースがあるという点も考慮すると、屋根付きの駐車場などの屋内が理想の保管場所といえるでしょう。
タイヤの置き方(積み方)
ここまでは、タイヤを保管するのに適した環境について紹介してきました。さらにここでは「タイヤをどのように収納するか」について解説します。
ポイントとして、タイヤの置き方に注意しましょう。置き方次第では、タイヤの劣化が進んでしまう可能性があるからです。
ホイールがついている場合
タイヤのホイールをつけたまま保管する場合は、「横積み(タイヤを横に寝かせて積むこと)」が最適です。
タイヤの置き方には、横積みの他に「縦積み(タイヤを縦に並べること)」もありますが、縦積みにしてしまうと、ホイールの重さがかかって、接地面が変形するおそれがあります。
横積みしたタイヤは、半年に一度の間隔で並べ替えましょう。これにより、同じ重さがかかり続けることによるタイヤの変形などを防ぐことにつながります。
ホイールを外している場合
ホイールを外してタイヤを収納する場合の置き方は、縦積みにするのが一般的です。
ホイールがない場合に横積みにしてしまうと、下に向かって重みがかかり、一番下のタイヤが変形したり、サイドウォール(タイヤの側面)に傷がついたりするおそれがあるからです。
縦積みで置く場合も、半年に一度を目安に積む順番を変えることをおすすめします。タイヤの変形や損傷するリスクを抑えることにつながります。
タイヤラックを利用する場合
タイヤラックはその名の通り、タイヤをストックするための収納グッズです。タイヤラックがよく利用されている理由は、その利便性にあります。
タイヤラックを利用すれば、収納するタイヤが固定されるため縦積みにした時に起こりやすいタイヤの転がりを防ぎます。また、縦にスペースを取るのですっきりと収納できます。
タイヤラックには、横積み用と縦積み用があります。タイヤの大きさや使いやすさ(キャスター付きなど)といった点も考慮して、一番利便性が高いものを選ぶと良いでしょう。
タイヤカバーが必要な理由
タイヤラックと同じように、収納グッズとしてよく利用されているのがタイヤカバーです。
タイヤを覆うことで、直射日光が直接タイヤに当たることを防いでくれるだけではなくホコリや汚れ、雨水も避けられます。
マンションのベランダなど、屋外にしか収納スペースを確保できないという場合に活躍します。
たとえ屋内にタイヤを置いたとしても、ホコリや汚れを防ぐためにタイヤカバーをかけた方が無難です。
防水機能だけではなくさまざまな機能性を備えたタイヤカバーが市販されているので、用途に合わせて選ぶと良いでしょう。
タイヤは何年保管できる?
タイヤは消耗品です。そのため、どんなに丁寧に扱ったとしてもいずれは寿命が来て、買い替える必要が出てきます。
なお、タイヤの寿命の目安は、以下のとおりとされています。
・新品で一度も使用していないタイヤは、製造から10年
・夏タイヤは、使用を開始してから4~5年
・スタッドレスタイヤは、製造から3~4年
・未使用のスタッドレスタイヤは、製造から4年
各数字はあくまでも目安です。しかし少なくとも目安の期間以上経過したタイヤは、使用を避けた方が良いでしょう。
製造年月を知るには、タイヤの側面に刻印されているアルファベットと数字の組み合わせ(セリアル番号)の数字部分をチェックします。
たとえば、セリアル番号が「RXE1020」の場合、そのタイヤの製造年月は、2020年(「20」)の第10週目(「10」)という意味です。
便利なタイヤ保管サービス
「タイヤを置くスペースを確保するのが難しい」「タイヤを適切に保管できるかどうか自信がない」という場合は、タイヤ保管サービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
タイヤ保管サービスとは、使わないタイヤを一時的に預かるサービスのことです。
費用はかかりますが、
・タイヤを保管するのに適した環境が整っている
・タイヤの管理を専門家に任せられる
・依頼先によっては、タイヤの履き替えなどタイヤ関連のサービスと併用できる
などのメリットがあります。
タイヤ保管サービスの料金は、依頼先の料金体系やタイヤの種類、利用期間などによって異なりますが、13inch(インチ)以下のタイヤ(預かりのみ)だと1,000~3,000円/月の間で料金設定をしている店舗が多いようです。
まとめ
タイヤの正しい保管方法について紹介しました。タイヤを保管する際は、事前準備をすることと、保管に適した環境を用意することがポイントです。
タイヤの劣化の要因となるのは、
・紫外線
・水
・熱や油
です。
これらの影響を受けないようにタイヤを置く場所を決めて、縦積みまたは横積み、またはタイヤラックを活用して保管することをおすすめします。
タイヤの劣化を防ぐことができれば、自宅での保管も問題ありません。適切な環境を用意することが難しい場合は、外部サービスの利用を検討するのも一案です。
タイヤの正しい保管方法を実践して、次のシーズンも安心して使えるような環境を整えていきましょう。