オイルフィルターは、エンジンオイルの汚れや不純物を取り除き、エンジンを良好な状態に保つために重要なパーツです。一般的にエンジンオイルをきれいにするオイルフィルターは、オイルエレメントと呼ばれます。
では、オイルフィルターとオイルエレメントの違いとは何なのでしょうか。今回は、オイルフィルターとオイルエレメントの違い、オイルフィルターの構造や種類、そしてオイルフィルターを自分で交換する方法について解説します。
目次
オイルフィルターとオイルエレメントの違い
「オイルフィルター」と「オイルエレメント」は、「エンジンオイルをきれいにするパーツ」という意味で使われることが多く、同じ部品と考えている方もいるかもしれませんが、実は違いがあります。
オイルフィルターは、エンジンオイルをきれいにするカートリッジ全体を指します。一方、オイルエレメントはオイルフィルター内にある「ろ紙」を指します。
しかし、パーツを販売している店舗によっては、オイルフィルターをオイルエレメントとして販売していることもあるほどオイルフィルターとオイルエレメントは同じ意味で使われています。
厳密には違いがあるオイルフィルターとオイルエレメントですが、「フィルター交換」と「エレメント交換」のどちらでも意味が通じることがほとんどであるため、カーディーラーや自動車整備工場にオイルフィルター交換を依頼する時には、言葉の違いに気を遣わなくても問題ないでしょう。
オイルエレメントの役割
オイルフィルター内にあるオイルエレメント(ろ紙)の役割は、エンジンオイルに含まれる金属片・鉄粉といった異物や不純物を取り除くことです。より広い面積で異物や不純物を取り除けるよう、オイルフィルター内でろ紙がひだ折りになっています。
エンジンから送られてくるエンジンオイルには、スラッジや金属片などの異物や不純物が含まれており、オイルエレメントでろ過せずエンジン内にオイルを循環させてしまうと、エンジンの摩擦抵抗が増加し、エンジンが不調になったり、エンジン内部を傷つけてしまったりします。
エンジンの調子を良好に保つためにも、オイルエレメントは重要な役割を担っているのです。
オイルフィルターの構造を解説
エンジンオイルをきれいにするパーツであるオイルエレメントが内蔵されているオイルフィルターはどのような構造になっているのでしょうか。
ここからは、オイルフィルターを構成する部品を解説します。なお、今回は一般的に多く使われているフルフロータイプ(スピンオンタイプ)の構造を解説しています。
エレメント
エレメントは、オイルフィルター内にある「ろ紙」のことで、カートリッジの中心部にある金属のフレームを囲むように配置されています。
オイルフィルター内でひだ折りになっているエレメントは、エンジンオイルに含まれる金属片・鉄粉・スラッジなどの異物・不純物を取り除く役割を担っている重要なパーツです。
エレメントは、使用していくうちに目詰まりが発生し、異物や不純物をろ過する能力が低下するため、定期的な交換が必要となります。
リリーフバルブ
リリーフバルブは逃がし弁のことで、オイルの粘度が高いエンジンの始動時やエレメントが目詰まりを起こした時に、オイルの流量を確保するために開くバルブ(弁)です。
そのため、通常時はバルブが閉じています。エレメントの目詰まりによってリリーフバルブが開いてしまうと、異物や不純物をろ過しないままエンジンオイルが循環することになります。
そのため、定期的にオイルフィルターを交換して、エンジンに異物や不純物が循環しないようにすることが大切なのです。
アンチドレーン弁
アンチドレーン弁は、エンジンの停止中にエンジンオイルが逆流しないようにするバルブです。また、エンジンが始動している時にオイル切れにならないようにする役割もあります。
アンチドレーン弁は、エンジンから送られてくるエンジンオイルの取り入れ部に装着されています。
サポートスプリング
サポートスプリングは、セットスプリングとも呼ばれる部品で、運転やエンジンそのものの振動、エンジンから送られてくるオイルの油圧などによりエレメントが動かないよう固定しているバネです。オイルフィルター内の上部に設置されています。
ガスケット
ガスケットは、Oリング(オーリング)とも呼ばれる部品で、オイルフィルターの本体とエンジンブロックの取り付け面を密閉する役割を担っている大切なパーツです。オイルフィルターのガスケットは、エンジンやオイルの熱などに耐えられるよう、高品質な材料が使われています。
オイルフィルターがガスケットで密閉されないとオイルが漏れてしまうため、古いオイルフィルターの残骸が残っていないか確認してから新しいオイルフィルターを取り付けるようにしてください。
また、新しいオイルフィルターを取り付けるときは、ガスケットにエンジンオイルを塗っておくと、ガスケットのヨレや損傷を防ぐことができます。
圧力調整弁(レギュレーターバルブ)
圧力調整弁(レギュレーターバルブ)は、オイルポンプから送られてくるエンジンオイルの油圧が一定以上になると開くバルブです。オイルフィルターに異常な油圧がかからないようエンジンオイルをバイパスさせる役割を担っています。
オイルフィルターの種類と特徴
オイルフィルターには、多くのガソリン車に使われている「フルフロータイプ」、ディーゼル車に使われている「フルフロー・バイパス併用型」、フルフロー・バイパス併用型を1つのオイルフィルターにまとめた「コンビネーション型」の3種類があります。
ここからは、オイルフィルターの種類と特徴について解説します。
フルフロータイプ
フルフロータイプは、ガソリン車に多く採用されているオイルフィルターです。エンジンオイルを汲み上げ、圧送されたエンジンオイルをエレメントでろ過して、金属片やスラッジなどを吸着する構造となっています。
フルフロータイプのオイルフィルターは、カートリッジ全体の交換が必要なスピンオン型と中身のろ紙だけを交換するエレメント交換式の2種類があります。
フルフロー・バイパス併用型
フルフロー・バイパス併用型は、主にディーゼル車に使われているタイプで、2つのオイルフィルターが装着されていることが特徴です。
フルフロータイプに併設されるバイパスフィルターは、フルフロータイプのオイルフィルターでろ過できなかったカーボン汚れや微粒子を取り除く目的で設置されています。
そのため、バイパスフィルターは、フルフロータイプのオイルフィルターよりもろ紙の目が細かく、時間をかけてろ過する構造になっています。
コンビネーション型
コンビネーション型は、2つのオイルフィルターが装着されるフルフロー・バイパス併用型の機能を1つのオイルフィルターに集約したタイプです。
2つのオイルフィルターの機能を1つにまとめていることから内部構造は複雑ですが、小スペースで済むことがメリットです。
コンビネーション型は、フルフロー・バイパス併用型と同じ機能であることから、主にディーゼル車に使われます。
オイルフィルターを自分で交換する方法
オイルフィルターを自分で交換する時は、エンジンオイルの交換と同時に実施すると良いでしょう。ここからは、エンジンオイルの交換と同時にオイルフィルターを交換する時の手順や注意点・確認すべきポイントについて解説します。
用意するもの
エンジンオイルおよびオイルフィルターの交換をする時に用意するものは、主に次のとおりです。
・ジャッキ(車体を持ち上げるツール)
・リジットラック(持ち上げた車体を固定しておくツール)
・オイルチェンジャー(エンジンオイルを抜くツール)
・オイルジョッキ(オイルを入れるためのツール)
・ウエス(汚れた部分を拭き取る)
・廃油処理箱(抜いたエンジンオイルを処理するための処分箱)
・廃油受け皿(エンジンオイルの受け皿)
・パーツクリーナー(エンジンオイルを除去するクリーナー)
・エンジンオイル
オイルフィルターを交換する際には、オイルフィルターに浸透する分のエンジンオイルが必要になります。そのため、エンジンオイルのみを交換する時よりも多め(約200mlほど)にエンジンオイルを用意しておきましょう。
交換手順
エンジンオイルおよびオイルフィルターの交換手順は次のとおりです。
1.エンジンオイルを抜く
エンジンオイルを抜く時は、エンジンを少し暖気するとオイルが柔らかくなり抜きやすくなります。エンジンオイルは、オイルチェンジャーの取扱説明書の手順に従って抜くようにしてください。
一般的な方法は、オイルゲージを抜き、オイルチェンジャーのノズルをオイルゲージ部に差し込み、エンジンオイルを抜きます。
2.オイルフィルターを外す
ジャッキアップした車体をリジットラックで固定し、廃油受け皿をエンジンオイルが出てくる場所に置きます。温まったエンジンやオイルフィルターで火傷をしないよう注意しながら、オイルフィルターレンチを少しずつ回して、オイルフィルターを取り外します。
3.新しいオイルフィルターを取り付ける
新しいオイルフィルターを取り付ける時は、取付部に古いオイルフィルターの残骸が残っていないか確認してください。古いオイルフィルターのガスケットなどが取付部に残っていると新しいオイルフィルターが正しく取り付けられず、オイルが漏れる場合があります。
また、新しいオイルフィルターを取り付ける時はガスケットのヨレや破損を防止するため、ガスケットにエンジンオイルを塗っておくことをおすすめします。
4.新しいエンジンオイルを入れる
オイルフィルターを取り付けたら、新しいエンジンオイルを補充します。エンジンオイルの規定量は、取扱説明書などで確認してください。また、エンジンオイルを補充する時は、入れすぎに注意が必要です。
エンジンオイルを入れる時のポイントは、規定量の半分ほどまで入れ、その後オイルゲージで量を確認しながら慎重に補充することです。少しずつ継ぎ足すように補充することで入れ過ぎを防止できます。
規定量まで入れたら、エンジンを始動させてエンジンオイルを循環させ、オイルフィルターにエンジンオイルを浸透させます。エンジンオイルをオイルフィルターに浸透させたら再度オイルゲージでオイル量を確認し、規定量のオイルが入っているか確認しましょう。
エンジンオイルが不足している場合には、継ぎ足すようにしてください。
オイルフィルターを自分で交換する際の注意点
エンジンオイルおよびオイルフィルターを自分で交換する時には、事前に確認しておくべきことや交換後に注意すべきことがあります。
ここでは主に2つの点を解説します。
廃油処理方法に注意
エンジンオイルおよびオイルフィルターを交換する時は、エンジンオイルの廃油処理方法を事前に確認しておきましょう。廃油処理には、主に3つの方法があります。
1.ゴミとして処分する
エンジンオイルは、廃油箱に入れることでゴミとして処分できる場合があります。ただし、廃油の処分方法は各自治体で異なるため、自分が住んでいる自治体のゴミ処理方法を確認してから捨てるようにしてください。
2.ガソリンスタンドで引き取ってもらう
ガソリンスタンドでは、廃油の引き取りをしている場合があります。ガソリンスタンドでエンジンオイルを引き取ってもらう時は、事前に廃油の引き取りを行なっているか、廃油処理代がいくらかかるのか確認しておきましょう。
3.エンジンオイルの購入店舗で引き取ってもらう
エンジンオイルを購入した店舗で廃油を引き取ってもらえる場合があります。エンジンオイルを購入する時に、廃油処理をしてくれるか、処分代金がかかるか確認しておきましょう。
汚れを落とすパーツクリーナーの種類に注意
パーツクリーナーは、オイルフィルターの取り付け部を洗浄する時や、付着してしまったオイルを落とす時に使用します。
しかし、パーツクリーナーの種類によっては樹脂やゴムを劣化させてしまう可能性もあるため、注意が必要です。パーツクリーナーを選ぶ時は、金属だけでなく樹脂やゴムなどにも対応しているものを選ぶようにしましょう。
まとめ
オイルフィルターとオイルエレメントは同じ意味として使われやすい言葉ですが、実はオイルフィルターはカートリッジ全体のことを指し、オイルエレメントはオイルフィルター内にあるろ紙を指しています。
エンジンオイルに含まれる異物や不純物を取り除くエレメントは、エンジンを動かすことで徐々に目詰まりしていきます。
エレメントが目詰まりするとエレメントのろ過機能が低下し、エンジンの不調を引き起こす原因になることもあります。そのため、定期的にオイルフィルターまたはオイルエレメントの交換が必要です。