カーリースは月々の支払額を一定にでき、初期費用もかからないため、購入するよりもクルマに乗りやすい手段として利用者が増加しています。
しかし、契約満了時の支払い総額が高くなる傾向にあるので、トータルでは損になるという見方もあります。
この記事では、カーリースの場合と購入した場合について、費用をシュミレーションして比較し、どのような場合で損になるのかを検証していきます。
カーリースが損に感じる理由
なぜカーリースが損に感じてしまうのでしょうか。それには、カーリースの特徴に次の4つの原因があるためです。
- カーローンと比べ月額が高くなる傾向にあるため
- 最後にクルマを返却する必要があるため
- 中途解約は原則不可のため
- 一部利用制限があるため
カーローンと比べ月額が高くなる傾向のため
カーリースは、税金や車検費用などが月額に含まれているため、どうしても月額がカーローンに比べて高く見えがちです。
ただし、税金や車検費用は必ず発生する費用なので、その点はカーリースもカーローンも一緒で、 あとはメンテナンス費用などをどう考えるかの違いです。
購入の場合はメンテナンスの頻度は完全に自由ですが、ケチってクルマの寿命を縮めるようでは本末転倒です。その場合は多額の出費にもなりかねないので、逆にリースのほうがお得と言える側面もあります。
最後にクルマを返却する必要があるため
カーリースは、原則として契約満了時にクルマを返却することになっています。 確かに、乗り潰すまで同じクルマに乗り続けたい人にとっては、カーリースは損かもしれません。
この場合は、「最後にもらえるプラン」を用意しているカーリースを選ぶと解決できます。 長期リースが条件ですが、最後にもらえるプランがある代表的なカーリース会社は以下の通りです。
また、リセールバリューの高いクルマの場合、契約満了時に残価設定を上回って高く売れる可能性があります。 乗り換え時に売却できる点を考慮すると、リースは分が悪いと言えます。
高く売れるクルマを選べる自信がある人は、購入の方がより良い選択肢かもしれません。
中途解約は原則不可のため
カーリースは基本的に中途解約ができません。もし契約期間満了を待たずに解約したい場合は、違約金が発生してしまいます。
契約期間は長いものになると5年〜7年という期間になるので、このような縛りによって精神的に不自由さを感じる人もいるのではないでしょうか。
途中解約しなくてもいいように、契約前には今後のライフスタイルに変化がありそうかどうかを考えることが大切です。
一部利用制限があるため
プランによって違いはありますが、カーリースには一部利用制限があります。例えば、走行距離に上限があったり、カスタムできなかったりなど、サービスやプランによっては制限がかかります。
カーリースはあくまでもクルマを借りているという立場なので、完全にマイカーのように使えない点について不満を抱える人もいます。
カーリースと購入の費用比較シミュレーション
では、購入する場合とカーリースを比べてみると、実際にはどちらの方がお得なのでしょうか?
ここでは、人気車の軽自動車N-BOXを、カーリースの場合と、ローン購入か一括払い購入かでシミュレーションしていきます。
ただし、ローンは60回払い(金利2.5%、5年で乗り換え)と想定し、車両代金は最安モデルの164万8,900円ですが、約165万円として計算することにします。
初期費用の比較
まずは、初期費用について比較していきましょう。 初期費用にかかる金額は、「車両代金・頭金」「法定費用」「諸費用」の3項目です。それぞれの違いを表にすると、以下の通りです。
カーリースの場合 | ローン購入の場合 | 一括払い購入の場合 | |
---|---|---|---|
車両代金・頭金 | なし | 33万円 | 165万円 |
法定費用 | なし | 9万1780円 | 9万1780円 |
諸費用 | なし | 3万円 | 3万円 |
合計 | 0円 | 47万1580円 | 179万1580円 |
※金額は概算です。
上記の表から、カーリースは初期費用の面で圧倒的に有利だということがわかります。
一括払い購入よりも手が届きやすいローン購入の場合でも、頭金として車両価格の10〜20%払うことが多いので、割と費用がかかると言えます。
また、リース以外は法定費用(税金、自賠責、リサイクル料金等)や諸費用がかかりますが、カーリースの場合はこれらを月額に含めて払うので、初期費用負担はありません。
結論として言えることは、初期費用だけを切り取ってみるとカーリースが有利です。
カーリースは、貯蓄がほとんどないといった事情で、初期費用を支払うのが負担に感じる場合は、有力な選択肢になると言えるでしょう。
維持費の比較
続いては維持費の比較です。カーリースはメンテナンスありのプランと仮定して計算しています。
まとめると、以下の表の通りです。
カーリースの場合 | ローン購入の場合 | 一括払い購入の場合 | |
---|---|---|---|
月額リース料 / ローン支払額 | 3万8,000円 | 2万3,000円 | 0円 |
オイル交換 | なし | 1回6,000円 ※年2〜3回 |
1回6,000円 ※年2〜3回 |
車検費用(法定費用含) | なし | 1回4万5,000円 ※3年目、5年目 |
1回4万5,000円 ※3年目、5年目 |
軽自動車税 | なし | 1万800円 ※年1回 |
1万800円 ※年1回 |
月額平均 | 3万8,000円 | 2万6,900円 | 3900円 |
5年間合計 | 228万円 | 161万4,000円 | 23万4000円 |
※金額は概算です。
表の通り、カーリースの大きなメリットは、メンテナンス費用や車検費用も含め、月々完全に定額で使えるという点です。
その反面、月額平均費用や5年間での合計金額が高くなってしまうのがデメリットです。カーリースが損と言われてしまう原因は、この部分によるところが大きいです。
初期費用と維持費という観点から、カーリースは初期費用がかからず乗り出しやすいですが、トータルではコストがかかると言えます。
カーリースが選ばれる理由
トータルではコストがかかるカーリースですが、それでも根強い人気があるのはなぜでしょうか?それには、次の4つの理由があるからです。
- 初期費用をかけずに新車に乗れるから
- 残価設定で車両価格がお得になるから
- 定額で利用し続けられるから
- メンテナンス費用を負担してもらえる場合もあるから
初期費用をかけずに新車に乗れるから
新車に乗るには、当然ながら購入が主な方法です。ただし、頭金など多額の初期費用がかかるケースが多いのがネックです。
一方、カーリースでは頭金を納めなければ初期費用はほとんどかからず新車に乗り始められます。カーリースは、新車に乗りたいけど初期費用がかかるので乗れなかったという人にとって、強い味方になってくれるのです。
残価設定で車両価格がお得になるから
残価とは、数年後に残っていると思われる車両の価値のことで、大抵は車両価格から残価を差し引いた金額だけをリースすることができます。
残価設定がされるので、車両価格の全部を支払うわけではないのも大きなポイントです。
ただし、キズをつけてしまうなど、乗り方によっては契約終了時に残価を下回ることもあります。場合によっては差額を支払わなければならないこともあるので、クルマは大事に乗ることが大切です。
定額で利用し続けられるから
カーリースのメリットは、車検や税金など、まとまったお金を支払う局面がなく、自己負担で修理をしなければならない限りは、定額で利用できるという点です。
毎月の支出が一定なので、収支の計画が立てやすいという点でもカーリースは選ばれています。
ただし、契約内容によって違いがありますが、キズをつけたりぶつけたりした場合は、返却時に自己負担で修理が必要となり、予想外の出費となるので注意しましょう。
メンテナンス費用を負担してもらえる場合もあるから
メンテナンスリースの場合、オイル交換費用などが含まれているプランも多く、さらに消耗品の交換費用もコミコミになっている場合もあります。
その分月額費用は高くなる傾向にありますが、走行距離が多い人にとってはむしろプラスになることもあります。
メンテナンス費用を負担してもらえれば、普段メンテナンスに対してあまり関心がない人も積極的になれますし、クルマをいい状態に維持しやすいでしょう。
結論、カーリースは本当に損なのか?
とてもお得感のあるカーリースですが、実際のところ損なのかどうかは、人によって違ってくるのが事実です。
ここでは、どんな人がカーリースに向いているかと、場合によっては損になるのはどんな人かについて解説します。
支払い総額だけでは測れない「得」がある
カーリースは確かに、最終的な支払い総額だけを切り取れば損かもしれません。
しかし、初期費用を抑えられたり、完全に定額で使えたりなど、支出の見通しを立てやすいというメリットがあります。
また、メンテナンスや車検等も気にすることなくクルマに乗れるので、クルマを所持することへの抵抗を大きく減らせます。
毎月定額でメンテナンスを気にしなくて良いことは、支払い総額以上にお得感が大きいと言えるでしょう。
カーリースが向いている人
カーリースが向いている人は、以下のような人です。
- 初期費用を用意する余裕がない人
- ローン払いを検討している人
- 大きな支出をできるだけ避けたい人
初期費用を用意する余裕がない人
クルマを購入する場合、頭金や税金・法定費用などの諸費用が必要で、N-BOXでシュミレーションしたように、数十万円単位の金額がかかります。
カーリースは、このようなまとまった資金を用意する必要がないので、初期費用を用意する余裕がない人や、すぐにクルマに乗りたい人にも向いています。
金銭面が原因でクルマに乗れなかった人にとって、カーリースは非常に便利な手段です。
ローン払いを検討している人
ローン払いにして、毎月の支払い額を一定にしようと検討している人にもカーリースはおすすめです。
カーリースもローン払いも、毎月一定金額を支払う点は同じですが、ローン払いは初期費用と定期的な維持費が別途必要です。
その点、カーリースの方が初期費用もなく、維持費と車検・税金も含まれているので、毎月の支払い額に変動がなくわかりやすいです。
ただし、カーリースの方が毎月の支払い額が高くなるので注意してください。
大きな支出をできるだけ避けたい人
クルマを所持していると、車検や毎年の自動車税はついて回る問題です。
車検のある月や税金を払う月などはどうしても支出が大きくなるため、大きな支出を避けたい人にとってもカーリースは向いています。
カーリースは車検や税金も含んだ上で毎月定額になっているので、大きな支出が必要になる時期がほとんどないので安心して乗れます。
また、プランによって、消耗品もサポートしてくれるメンテナンスパックもあります。
カーリースが損になるかもしれない人
反対に、カーリースが損になるかもしれない人は次のような人です。
- 支払い総額を重視する人
- 完全に自分のクルマにしたい人
支払い総額を重視する人
カーリースは初期費用を抑えられますが、最終的な支払い総額は割高となってしまうので、トータルでいくら支払うかを気にする人にとっては損になります。
また、車検や税金を除き、毎月の支払い金額だけで比べた場合も、ローン購入よりも高くなります。
もし初期費用を払える余裕がある場合はローン購入で、さらに可能なら、一括払いで購入した方が支払い総額は一番低くできます。
初期費用よりも支払い総額を重視する人は、購入という選択肢を検討すると良いかもしれません。
完全に自分の車にしたい人
カーリースは原則、車両残価が下がるのを避けるため、走行距離制限やカスタム不可といった制限があります。
そのため、利用期間中はどうしても借りたクルマに乗っているという感覚が気になる人も多いと思います。また、返却しなければならないため、傷をつけたり車内を汚したりしないように気を遣わなくてはなりません。
返却を気にしないで乗りたい人は、契約終了後にクルマをもらえるプランを選ぶと良いでしょう。もらえるプランなら制限がなく、いずれ自分のクルマになるので気にせず乗れます。
まとめ
今回は、カーリースは本当に損なのかどうかをシュミレーションした上で、カーリースが向いている人と向いていない人について解説してきました。
初期費用や維持費を気にせず、毎月定額で乗れることがカーリースのメリットですが、購入する場合よりも支払い総額が高くなるので、損になるという見方もあります。
数年後のクルマの使い方がどのようになりそうかを考え、カーリースにするか購入するかの参考にしてみてください。