マーケティング

高く売るのではなく、早く売るのが中古車販売の鉄則!在庫管理の基本を解説

2021年10月14日

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今回も、カーライフ事業専門の経営コンサルタントとして長年活躍する株式会社ティオの山本 覚氏による講義の中からお届けします。

山本氏は、本講義において「中古車在庫管理の基本」をテーマに、生鮮品である中古車は「高く売る」のではなく「早く売る」のが鉄則であり、自社の「在庫基準」をつくることが何よりも大事だと語っています。

この記事では、中古車の在庫管理における基本的な考え方や在庫基準、そして仕入れ業務のポイントについてくわしく解説します。

中古車販売の3大リスク

中古車販売のビジネスには、3つのリスクがあります。

  1. 相場音痴:売買で損をする
  2. 不良在庫:資金繰り悪化を招く
  3. 値落ち:利益を圧迫する

それぞれ内容をみていきましょう。

相場音痴:売買で損をする

まず、中古車ビジネスは「売買において損をする割合が高い」こと。中古車の販売は、相場を知って初めて適正な商談ができます

その相場は主に4つあり、「AA(オートオークション)相場<下取り相場<買取相場<小売相場」という位置関係です。

かつてはスタートの位置にある「AA相場」が、すべの基準値となっていました。

しかし昨今では、基準が「小売相場」に移ってきており、そこからどれだけ値を下げて、買い取りや下取りができるかという流れになっています

この4つの相場に長けていないと、売買において損をしてしまうのです。

不良在庫:資金繰り悪化を招く

2つ目のリスクは、不良在庫による「資金繰りの悪化」です。在庫管理を徹底すると、利益が増えて資金の流れが円滑になります

そのためには、自社における「平均在庫日数」や「長期在庫車の定義」を明確にすることが必要です。ここをしっかり定義できていないと、在庫で損をしてしまいます。

値落ち:利益を圧迫する

3つ目は、値落ちによって「利益を圧迫する」ことです。中古車は生鮮食料品と一緒で、日が経てば価値が下がっていきます

この在庫の値落ちが、利益を圧迫していくのです。したがって、できるだけ早く在庫を回転させることが、損失を最小限にする秘訣です。

上記3つの要素が、経営を根底から悪化させていきます。中古車販売は、1台1台の単価が10万円単位の金額となるので、ちょっとしたミスで資金繰りが厳しくなってしまいます。

利益も取れるがリスクも大きい、それが中古車販売ビジネスだと認識するべきでしょう。

トヨタがカンバン方式を導入した理由は?

在庫と経営の関係性を、トヨタのカンバン方式を例に説明しましょう。なぜ、トヨタはカンバン方式を導入したのでしょうか。

まず、在庫を持たないと、お客様に対して商品を供給(出荷)することはできません。しかし、在庫を持ちすぎると、手元に現金(キャッシュ)が残らず、経営を圧迫します。

在庫を持たなくても持ちすぎても、売上や利益は上がりません。このように、在庫管理は経営において、とても重要な要素なのです。

在庫があることのメリットは、2つあります。

  1. 需要と供給の差を埋める
  2. 販売チャンスを逃さない

つまり、在庫があれば、お客様の需要や注文にすぐ対応できるため、購入目的で来店された際に、在庫をあてがって販売できるということです。

一方で、在庫があることによるデメリットは、3つあります。

  1. 在庫のままでは売上や利益にならない
  2. 資金の回転を鈍らせる
  3. 商品の劣化を招く

在庫は売れて初めて、売上や利益に計上できます。しかし、在庫がそのままということは支払ったお金を寝かせてしまい、その流れを悪化させます。

また、在庫にしてしまうことで損耗や値落ちを招き、商品価値を下げてしまうリスクもあるのです。

トヨタのカンバン方式は、必要な時に必要な量がそろうことが強み

在庫経費や価値ロス、管理経費という「在庫のムダ」がなく、在庫リスクをゼロにできるので、トヨタにとっては多大なメリットがあるのです。

在庫管理の基本

ここからは、中古車の在庫管理における基本を解説しましょう。在庫管理の目的は、在庫として眠っている資金を有効に運用して、利益の源泉とすることです。

在庫管理の業務には、以下の4つがあります。

  1. 適切な将来の需要予測 → 売上予測・計画
  2. 時期、数量の適正な仕入れ → 効率仕入
  3. 適正な価格の保持 → 利益の確保
  4. 適正な在庫レベルの維持 → 適正在庫

まず、周りの環境から需要予測をして、計画的に仕入れを行っていきます。

次に、2〜3月のピークに合わせて在庫を増やし、逆に低下する8月は在庫を減らすといったような、時期による効率的な仕入れをします。

さらに、適正な価格を保持して利益を確保するとともに、適正な在庫レベルを維持することが、在庫管理の業務となります。

小売業は「在庫という投資から、どれだけ回収したか」というビジネス。この点が、技術を売る整備サービス業とは、根本的に違うところです。

中古車を在庫にしておくにはお金がかかる

中古車の在庫にしておくには、多大なお金がかかってきます。損益の計算では、「売上」から「仕入原価」を引くと「粗利益」が算出されます。そして「粗利益」から「在庫経費」を引いたものが「営業利益」です。

在庫の維持管理費用となる「在庫経費」には、主に以下の8つがあります。

  1. 展示場所(賃貸料、固定資産)
  2. 維持管理
  3. 販売促進費
  4. 在庫金利
  5. 減価滅却
  6. 営業スタッフの人件費
  7. 法定費用
  8. 値落ち

在庫には「仕入価格」に加えて、AA落札費用や陸送費などの「他変動費」がかかります。2つの合計と実売価格との差が「粗利益」です。

ここで注意すべき点は「粗利益の計算には、在庫経費が入っていない」ということ。在庫経費は展示日から日々発生するので、日を追うごとに実際の「営業利益」は減っていきます

したがって、展示日から早く販売できれば、それだけ利益は増えます。

逆に、長期在庫となって在庫経費がかさみ、粗利益が在庫経費によってゼロになる点「損益分岐点在庫日数」を超えてしまってからの販売は、「営業損失」となるのです。

つまり、「高く売る」のではなく「早く売る」のが、中古車販売の鉄則だといえるでしょう。

具体的な在庫経費と在庫日数の関係

では、在庫経費と在庫日数の関係について、具体的な数値でみていきましょう。例として、80万円で仕入れた車両を100万円で販売する際、以下の3つを算出します。

Q1. 在庫日数が60日だとしたら、利益はいくらになるのか?
Q2. 10万円の利益を残すには、何日間まで在庫にできるのか?
Q3. 損益分岐点在庫日数は?

<前提条件>
・月間の在庫経費は、車両値下がり値も含め合計63,780円

Q1. 60日在庫したら、利益はいくらになるのか?

Q1については、まず1日あたりの在庫経費を算出します。63,780円÷30日で、1日あたりの在庫経費は「2,126円」となります。

在庫日数が60日なので、在庫経費は2,126円×60日=127,560円です。粗利益は、100万円−80万円で20万円なので、そこから127,560円を引きます。

したがって、「72,440円」が営業利益となります。

Q2. 10万円の利益を残すには、何日間まで在庫にできるのか?

次にQ2ついては、粗利益が20万円の車両を販売して10万円の利益を出すべく、残りの10万円を1日の在庫経費である2,126円で割り算します。

つまり、計算結果の「47日」で売り切っていく必要がある、ということがわかります。

Q3. 損益分岐点在庫日数は?

最後にQ3。この車両の粗利益は20万円なので、1日の在庫経費である2,126円で割り算しましょう。計算すると、「94日目」が損益分岐点在庫日数となります。

上記は一例ですが、損益計算書から展示場にかかっている費用がどれくらいかかっているのか、しっかりと把握したうえで、自社は在庫経費がどれだけかかるのか、経営者として頭に入れておく必要があるでしょう。

在庫基準を明確にしよう

在庫で損をしないためにも、自社の「在庫基準」を明確にしましょう。ここでは実際に、在庫基準の例を紹介します。

展示から20日目まで

まず、展示日から20日目までは「通常販売車」として、展示前の加修を徹底したうえで、魅力的な商品化を実施します。合わせて、車両のセールスポイントを把握します。

展示から21日目〜35日目

21日目〜35日目は「積極販売車」として、チラシに優先的に掲載するとともに、車両を特設展示場所へ移動し、「おすすめ車」の掲示も行います。

価格については、展示日からの「初期価格」を維持します。

展示から36日目〜50日目

36日目〜50日目は「責任販売車」として、車両を営業スタッフに割り当て、特別奨励金を付けて販売していきます。

オプションを追加して、商品の魅力を上げていくのも良いでしょう。価格は初期価格から5%前後ダウンさせます。

展示から51日以上経過した場合

51日以上の在庫となった車両は「見切り販売車」として、目玉コーナー(アウトレットコーナー)に移動します。 価格は初期価格から10%前後ダウンさせていきます。

このような自社の在庫基準をつくることで、長在車を減らすことにつながります。これが、展示場をフレッシュに保つ秘訣でもあります。

利は元にあり!利益が出る仕入れを

最後に、仕入れという業務について確認します。以下8つのポイントについて、自社の基準を決定していきましょう。

  1. 方針:誰に、何を、どう販売するか
  2. 仕入先:下取り+買取構成比50%以上
  3. 日数:在庫日数基準を明確にする
  4. 車種:主体となる展示車種の構成を決める
  5. 価格:主体となる販売価格帯を決める
  6. 品質:AIS基準を元に仕入品質を決める
  7. 在庫額:在庫金額の上限を決める
  8. 仕入量:2ヵ月先の営業目標にマッチさせる

まず「誰に」「何を」「どう販売するのか」を明確にしましょう。仕入れ先については、自社の下取りと買い取りが全体の半分となることを目指しましょう

AAで仕入れた在庫は、ときに利益が出ないこともあります。

そして、在庫日数基準も明確にしましょう。40日〜45日あたりとなりますが、可能な限り短い日数が良いため、理想は30日です。

次に、自社の展示場に合わせて展示車種の構成を決め、自社の商圏に沿って販売価格帯を決定していきます。

仕入れる車両の品質も、AIS基準を元に自社の基準を定めましょう。さらに、季節変動を踏まえながら、在庫金額の月間の上限も決めましょう。

在庫金額は、「販売目標台数×平均仕入れ単価×回転率」で求めることができるので、これを参考値に、自社の金額を決定しましょう。

最後に、2ヵ月先の営業目標台数にマッチさせながら、仕入れる車両の量を定めます。これが「仕入戦略」です。

「どう販売するか」という戦略が基準となり、「どう仕入れするか」が決まります。仕入戦略を立て、ミスのない効率的な在庫管理を目指しましょう。

まとめ

以上、中古車の在庫管理における、基本的な考え方や在庫基準、そして仕入れ業務のポイントについて詳しく解説しました。

  1. 中古車販売ビジネスは、利益を取れるがリスクも大きい
  2. 中古車は「高く売る」のではなく「早く売る」のが鉄則
  3. 自社で「在庫基準」を明確にしたうえで、見える化して管理
  4. どう仕入れるかという「仕入戦略」を持つ

上記4つの重要ポイントを押さえ、健全経営を心がけましょう。

記事協力:
株式会社ティオ 代表取締役 山本 覚 

略歴
新車ディーラー(マツダオート横浜)で営業職を経験した後、カーアフター業界専門コンサルタント会社に営業職として入社し、仙台、大阪、福岡の営業所長を経て指導部部長を8年務める。1999年(平成11年)に独立し、カーライフビジネス業界専門経営コンサルタントとして40年近くにわたり、カーアフター業界専門に実務改善指導・部門再構築指導、人材開発指導・マニュアル開発・諸規定策定等担当。また、カーメーカーおよび業界団体、関連企業等の依頼による職能別・階層別・テーマ別の各種セミナー・講演会等を担当。
詳しくはhttp://www.tio21.co.jp/administration/profile.pdf

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