マーケティング
フロント受付の品質を高めるために必要なことと整備提案ステップを解説
投稿日:2021/09/30更新日:2022/10/28
株式会社ティオの山本 覚氏による連続講義の一部を紹介します。
今回は「フロント力が企業力に」というテーマの講義から、特にフロント受付の品質を向上させるための業務の流れや心構えについて解説します。
品質を高めるフロント受付の流れ
まずは、フロント受付の流れからそれぞれの目的を考えていきましょう。
来店受付
お客様が来店されたら、来店受付をします。ここでの目的は、お客様の心に近づく機会にするということです。
したがって、最高の笑顔でお客様の名前を呼んでフレンドリーに接することを心掛けましょう。新規のお客様では難しい場合もありますが、既存のお客様の場合は名前と顔を一致させ
「〇〇様(さん)いらっしゃいませ」と温かく迎え入れることが必要です。
検診
来店受付が終わると、検診を行っていきます。検診の目的は、お客様へ提案するための情報を収集することです。
そのために、特に問診をしっかりと行うことが重要です。検診の中身については次の見出しでよりくわしくみていきます。
お客様への説明
検診後は、お客様への説明を行います。説明の目的は、お客様が理解・納得をしたうえで自己決定をできるようにすることです。
そのために、検診での情報をもとに下記のような順序で丁寧に説明を行っていきます。
- 現在の状況
- 不調があればその原因と今後の推移
- 整備の必要性と方法
- 整備の効果
- 整備時間と整備費用
- 取引条件
その後に、「いかがいたしましょうか」と判断を促し、その判断を受けて「こちらでよろしいですね」と確認を取ることで、納得したうえでの同意=インフォームドコンセントが成立します。
見積もり作成
受付のクロージングとなるのが見積もり作成です。目的はこれまでの取引内容を正しくまとめることです。
そのために今までに合意した内容を再度説明し、最後に「ご確認ください」と最終確認をお客様にしていただくことが重要です。
ここまでフロント受付の大まかな流れを確認してきました。続いて、お客様とのインフォームドコンセント成立に欠かせない「検診」をよりくわしくみていきます。
インフォームドコンセントに欠かせない「検診」
検診には大きく分けて4つの段階があります。それぞれの違いをみていきましょう。
問診
お客様に不具合について、「いつ」「だれが」「どこで」「どのように」「どうなったか」を聞いていきます。
見診
問診でつかんだ内容を、実際に目・耳・鼻・手・体で確かめていくことをここでは見診と定義します。不正改造の確認もこの段階でしっかりと行うことが重要です。
触診
問診でつかんだ内容を、実際に再現して確認します。
測診
問診でつかんだ内容を、基本データにもとづいてテスターなどで測って確かめます。
上記4つのうちフロントで行う検診は、問診、見診、触診の3つです。測診はテスターなどを使う必要性があるので現場スタッフが行います。
これらの検診を行うことで、車の状態と不具合の原因を把握し、その後の適切な情報提供につなげていくことができるのです。
品質の高い受付検診にするためにも、前半の3つの検診についてはフロントが責任を持って行うことが重要です。
なかでも、お客様と直接関わる「問診」について、さらにくわしくみていきましょう。
問診を進める心構えと問診の要領
問診を効果的に進めるための心構えは次の5つです。
- お客様のための問診と心得る
- 表面の言葉に惑わされない
- 固定観念で臨まない
- 私情を挟まない
- 痛みを共有する
問診は適切な情報収集のためというのが大きな目的ですが、それと同時に情報収集をすることが最終的に「お客様の問題を解決する=お客様のために行う」ということを改めて心得ることが重要です。
また、お客様は言った言葉とその真意とが異なる場合もあるので、念には念を入れて確認を行うことも大切です。
車の不具合についても、最初から決めてかかってしまうと大変なことになる場合があります。固定観念を外し、柔軟な発想をもって対応していくことが必要です。
そして、当然のことながら私情は挟まず、事故などで修理を行う場合は、気遣いと寄り添う言葉をかけていくことが大切です。
こういった対応をすることで、お客様の安心感と信頼感を高めることができます。
問診のステップ
問診は、まず「何か不具合はないですか?」と全体を聞いてから、個別の内容へと話を進めていきます。
順序よく、具体的にお客様の話を聞き、適時アドバイスを入れることでスムーズに問診が進みます。
その際に、適度に相槌を入れることも忘れずに行いましょう。相槌が少なく質問攻めにしてしまうと、尋問されている印象をお客様に与えてしまう可能性があります。
整備提案の必要性と提案ステップ3つ
ここからは、インフォームドコンセントにもとづいたお客様への説明となる整備の提案について深掘りしていきます。
整備提案とは
整備提案とはお客様が抱える問題や悩みに対して「解決策を提示する」ことです。あくまでも「策の提示」なので売り込みとはまったく異なる行程です。
適切な解決策を出すことは、整備のプロとしての存在価値を示すためにも必要なことです。また、整備の必要性についても理解・納得してもらう目的もあります。
提案ステップ1:興味を持たせる
まずは疑問形でお客様に意見を投げかけることで整備に対して興味を持ってもらいます。
たとえば「どんな基準でエンジンオイルを選んでいますか?」などと気軽に普段の整備について考えてもらえる質問をしてみましょう。
提案ステップ2:効果、効能を知らせる(理解してもらう)
次に、効果や効能など、お客様にとっての利益を提示し、納得してもらいます。
たとえば「低燃費オイルは車の性能が100%発揮されます」などと、ベネフィットを伝える説明をしていきます。
提案ステップ3:必要と思ってもらう
利益だけでなく、その製品を使わなかった時のお客様の不利益を併せて提示していきます。
たとえば「低価格のオイルでもエンジンは不調になりませんが、燃費や潤滑度などでおすすめいたしかねます」というように、なぜおすすめしないのかをしっかり理由づけしてお伝えすることが重要です。
上記の3つの流れを意識することで、お客様に納得してもらえるストーリー性を持たせることができます。
いきなりおすすめするのではなく「興味→メリット→デメリット」と「流れ・ストーリー」を意識し、お客様の自己決定を促していくことが大切です。
最後に、フロント受付の品質を高めるために必要なアクションについてみていきましょう。
一流のフロントスタッフを目指して
一流のフロントスタッフになるためには以下の5つの力を磨くことが大切です。
- 技術力
- リーダーシップ
- サービスセンス
- 社会性
- 教養
「フロントに技術力は必要なのか?」と疑問に思う方もいらっしゃると思いますが、現場の技術を知識として持っておくことで、お客様との適切な商談を行うことができます。
そのためにも技術講習会などに積極的に参加してみましょう。
フロントで現場をコントロールしていき、ときには強めに言わなければならないこともあるためリーダシップが必要になってきます。
また、商談におけるサービスセンスも重要です。上座下座から始まり、立ち振る舞いの基本的なマナーを磨いていくことで良い印象を保つことができます。
それだけでなく、お客様とのコミュニケーションにおいては、世の中でどのようなことが起きているのか、何が注目されているのかなど社会性や教養を身につけることも大切でしょう。
何事にも目標を持って臨んでいくことが重要です。
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お客様とのコミュニケーションを円滑に進めるためには、何よりもお客様の状況をしっかりと把握する必要があります。
自動車整備工場のマーケティング活動をサポートする「cars MANAGER」では、お客様一人ひとりの状況を管理することが可能。
車検・期日点検の満了月の管理はもちろん、タイヤ・オイル・バッテリーの点検結果、車両乗換の意思の有無などを一括でリストで管理することができます。
また、予約のデジタル化もcars MANAGERの導入で実現できます。詳しくは下記のバナーから公式サイトで確認してみてください。
まとめ
今回はフロント受付の品質を高めるために、受付の流れから必要な心構えまでを解説しました。
フロント受付で、お客様が納得して自己決定を行うためには、検診のステップが非常に大切であり、「お客様のために行うものである」といった心構えも重要です。
フロント受付の品質向上から、フロント力を磨くことでお客様の満足度をさらに向上させることができます。ぜひできるところから品質向上のさらなる一歩を踏み出してください。
記事協力:
株式会社ティオ 代表取締役 山本 覚
略歴
新車ディーラー(マツダオート横浜)で営業職を経験した後、カーアフター業界専門コンサルタント会社に営業職として入社し、仙台、大阪、福岡の営業所長を経て指導部部長を8年務める。1999年(平成11年)に独立し、カーライフビジネス業界専門経営コンサルタントとして40年近くにわたり、カーアフター業界専門に実務改善指導・部門再構築指導、人材開発指導・マニュアル開発・諸規定策定等担当。また、カーメーカーおよび業界団体、関連企業等の依頼による職能別・階層別・テーマ別の各種セミナー・講演会等を担当。
詳しくはhttp://www.tio21.co.jp/administration/profile.pdf