昨今、その手軽さから人気が高まってきている電動キックボード。持ち運べて便利な交通手段ではありますが、公道を走るには免許が必要なことをご存じでしょうか?
本記事では、電動キックボードを利用する際の注意点を解説します。
目次
電動キックボードは免許が必要
電動キックボードとは、足で地面を蹴って進む車輪付きの板(キックボード)に電動式のモーターを搭載しているものです。
1回の充電で30km近く走行できるものや、最高時速が40km/hほど出るものなど多用なタイプが存在します。
全長1mほどのコンパクトな設計で軽いうえに、ハンドルを折りたたんで収納できます。さらに、充電は家庭用コンセントで簡単に行うことができます。
免許が必要な理由
現在の道路交通法では、電動キックボードは「内閣府令で定める大きさ(0.60kW)以下の定格出力の原動機を用い、かつレール又は架線によらないで運転する車」に該当し、これは原動機付自転車(以下、原付)と同じカテゴリーに入ります。原付に乗るには免許が必要です。
そのため、同じように出力が該当する電動キックボードを利用するためには、運転免許証が必要となるのです。
電動キックボードで公道を走る場合はナンバーも必要
原付と同じということは、電動キックボードで公道を走行するためにはナンバーも必要です。さらに保安部品の取り付けも必要です。
保安基準を満たすためには、バックミラーや方向指示器、前照灯、番号灯などの装着が義務づけられています。
これらの要件を満たし、ヘルメットの着用と免許証を携帯すれば車道を走行できます。
ただし、電動キックボードは原付と同じ扱いのため、歩道は走行できません。
整備不良車両運転の場合、違反となり処罰の対象に
保安部品の装備が一つでも欠けたまま走行していると、整備不良車両運転に該当してしまいます。これは道路交通法違反で、処罰の対象です。罰則は「3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金」となります。
電動キックボードを購入したら、各自治体に申請しナンバーを交付してもらい、保安部品の装備を忘れないようにしましょう。
自賠責保険への加入が必要
原付と同じ扱いである電動キックボードは、自賠責保険への加入も必要です。一般的な電動キックボードの保険料は125cc以下の分類となり、年間7,500円かかります。
未加入で運転した場合、事故を起こしていなくても「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられます。また、無保険での運転は即免許停止処分となるため、必ず保険に入りましょう。
また、軽自動車税の納税も義務づけられています。金額は出力により変動し、0.8kW以下は年間2,000円、0.8kW超1kW以下は年間2,400円かかります。
15km/h以下は免許不要の規制緩和案
電動キックボードは新しい電動モビリティであり、電動キックボードを巡る法律は現在過渡期にあります。現状の道路交通法では、車体に使用されている原動機の出力に応じて車両区分が定められています。
しかし、このままではせっかく小回りの利く電動キックボードの利点を生かしきれず、電動キックボードのシェアリング事業者などからも規制緩和を求める声が高まっています。
そこで、より使いやすく安全に電動キックボードを使用するために、出力ではなく速度で規制する改案が検討されています。
それが、最高速度に応じて一部の電動キックボードを区分する案です。区分される速度は15km/h以下で、最高でも自転車と同じくらいのスピードです。
15km/h以下なら免許不要
15km/h以下であれば「小型低速車」に分類され、電動車イスなどと同じカテゴリーになります。小型低速車と同等の区分になれば運転免許証は不要となり、路側帯や自転車専用レーンの走行が認められます。
ただ、免許は不要とする一方、児童や幼児による運転は危険という意見もあり、16歳以上が運転できるとする案が検討されています。
電動キックボードの電車内への持ち込みは?
原付と同じ扱いということは、電動キックボードは電車への持ち込みはできないのでしょうか。
実は、電車への持ち込みに関するルールのうえでは、電動キックボードは自転車と同じ扱いになるため、持ち込んで乗車することが可能です。ただし、持ち運びには大きさや重さの規制などいくつか細かいルールがあります。
電車へ持ち込む時のルール
JRのルールでは、電車に持ち込めるもののサイズは、縦・横・高さを足して250cm以内で、重さ30kg以内とされています。
電動キックボードの重さは一般的に約10kg前後と軽いものの、サイズに関してはそのままでは持ち込めません。電車に乗り込む際は、必ず折りたたんで持ち込みましょう。
また、電動キックボードを持ち運ぶ際は専用ケースに収納するのがおすすめです。電動キックボードの車輪は汚れているので、むき出しのままでは電車内で他の乗客に当たり服を汚してしまう恐れがあります。
専用ケースは3,000~4,000円程度で購入できます。
専用ケースに入れれば、問題なく電車に持ち込めることがほとんどです。ただし、荷物の持ち込みに関するルールは鉄道会社によって細かく異なるため、私鉄などに持ち込む際は利用する鉄道会社のルールを確認してください。
電動キックボードの摘発例
電動キックボードは手軽さから利用者が増加する一方で、道路交通法の違反が後を絶ちません。電動キックボードによる事故も急増しており、取り締まりが強化されています。
実際にあった摘発事例をみていきましょう。
摘発例その1
2021年6月、東京都新宿区内で電動キックボードを無免許で運転し、信号無視で人身事故を起こした女性が書類送検されました。
赤信号を無視して交差点に進入し、タクシーと衝突。タクシーの乗客の男性に頭部打撲の軽いけがを負わせました。
女性は電動キックボードを前年に購入しましたが、ナンバーの交付申請をしておらず、免許も未取得でした。
摘発例その2
2021年5月、大阪府大阪市の駅前の歩道を男性が電動キックボードで走行し、歩行者の女性にぶつかって転倒させました。
女性は首の骨を折る重傷。しかし、男性はその場から立ち去り、ひき逃げ事件へと発展しました。
男性はその後逮捕され、容疑を認めています。男性は一人乗りの電動キックボードに知人女性と二人乗りで走行し、ヘルメットはかぶっていませんでした。
まとめ
近年、街中でも見かけることの増えてきた電動キックボード。電車やバスの「密」を避けられる移動手段として注目を集めており、また電動であるため環境に優しいこともポイントです。
しかし、走行には免許や保険、ナンバーが必要であるというルールは、まだあまり浸透していません。電動キックボードはある程度の速度を出して走行するものであるため、加害事故の可能性とは隣り合わせであることを自覚しましょう。
また、バックミラーなど保安部品の取り付けがされていない場合は警告を受け、摘発されることもあります。きちんと必要な装備も確認しましょう。
さらに、日本の道路は電動キックボードで走行することが想定されていません。運転する際は必ずヘルメットを着用し、安全に走行してください。
折りたためてコンパクトに持ち運びが可能な電動キックボードは、大変便利な移動手段です。ルールを守って電動キックボードを上手に活用しましょう。
※2021年11月現在の情報をもとに